第4回「父さんが死んだ」30年ぶりの兄の声 弟の出した答え

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 40~50代でひきこもり状態になっている人たちのことを心配するのは、親たちだけではありません。年齢が近い兄弟姉妹も、同じような思いを募らせています。生活に困り、社会から孤立する「8050(ハチマルゴーマル)問題」にどう向き合えばいいのでしょうか。

 「お兄ちゃんが……」。東京都の女性(50)は昨夏、九州の実家に住む70代後半の母から電話を受けた。20年以上ひきこもり状態が続く2歳上の兄が倒れ、入院したという。検査で脳に異常が見つかり、介護が必要になるかもしれないと告げられた。

 女性は高校卒業後に上京し、会社員の夫と暮らす。実家では、耳が遠くなってきた母と兄の2人が暮らす。父は2017年に他界。女性は「典型的な8050家庭です」と話す。

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 兄は専門学校を中退し、地元の会社を転々とした後、30歳ごろから自室に閉じこもった。直接の原因はわからない。両親は一時期、兄の部屋の前に置く食事に手が付けられた形跡からしか、生きていることを確かめるすべがなかったという。

 ひきこもり始めて数年後、母が「外に出るきっかけになれば」と飼い始めたシバイヌを兄は可愛がった。犬の世話に始まり、家事を手伝うようになって、家族の会話が少しずつ戻っていった。兄が犬の散歩や買い物に出かけるのは夜に限られたが、10年余りかけて、実家の雰囲気は良くなっていったという。

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 女性はその間、遠く離れた家…

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