「印鑑不要」政府方針に抵抗 あの人の仲介で空気が変化

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編集委員・堀篭俊材 座小田英史
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ハンコの逆襲①(全3回)

 蛍光灯の明かりを頼りに、彫り師の望月一宏(47)は「印刀」を使ってハンコの彫りの深さをそろえる。

 山梨県の旧六郷町はかつて「ハンコの町」として知られた。近隣の町との合併で、いまは現市川三郷町になった。単線が走る無人駅の近くに、望月の工房はある。

 「ハンコ業界が騒いだと報道され、悪者という誤解を持たれてしまった」と、望月はこの2年を振り返る。

 この間、もめにもめた改正商業登記法が4日の参院本会議で可決・成立した。

 この法改正は当初、会社を設立する手続きをオンライン化し、ハンコを不要にするという安倍政権成長戦略の一つの目玉になるはずだった。これにハンコ業界が「政治の力」を使って激しく抵抗し、折衷案のような中身に落ち着いた。

 業界にとって最悪のシナリオは避けられた。とはいえ、望月の気分は晴れない。

 「ハンコは使ってもらってこそ愛着が生まれる。その大切な機会が少なくなってしまう」

 それは、ハンコ業界にとって「死闘」ともいえる2年だった。

「ハンコは関係ないだろ」

 「法人設立のすべての手続きをオンライン化する」

 安倍政権は2017年12月…

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