「東電さん、申し訳ありません」被災した社長の罪と悔恨

有料記事きょうも傍聴席にいます。

小手川太朗
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きょうも傍聴席にいます

 「東京電力さん、まことに申し訳ありません」。福島県須賀川市にある建設会社の元社長の男(65)は法廷で声を震わせ、両手で顔を覆った。2011年3月の福島第一原発事故で大きな営業損害を受けた被災者が、なぜ加害者であるはずの東電に謝らなければならなかったのか――。

 7月11日、福島地裁であった初公判に紺色のスウェットに黒色のジャージー姿で出廷した元社長。逮捕時は黒かった髪には白髪が目立つ。裁判官に起訴内容を問われると「(間違いは)ございません」と認めた。

 起訴状などによると、元社長は経営していた建設会社が原発事故で損害を受けたとして、震災前の売り上げを水増ししたうその書類を東電に提出。さらに知人にも不正請求を持ちかけ、東電から計約1億7900万円億円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた。

 検察の冒頭陳述や被告人質問などから事件の経緯をたどると――。

 元社長が建設会社を設立したのは約20年前。小さな不具合にも社長自らが駆けつける地域に根ざしたアフターサービスが評判で、顧客の信頼を得ていった。

 ところが、原発事故で経営環境は大きく変わった。

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 須賀川市は原発から約60キ…

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