「美には機能が宿る」 炭素の新しい形に挑む化学者たち

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勝田敏彦
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 黒鉛とダイヤモンドは同じ炭素でできているのに、見かけも性質も全く異なる。その違いをもたらすのは炭素原子どうしのつながり方だ。炭素の「形」に魅せられ、新しい「作品」を生み出そうとする化学者の挑戦が始まっている。

鎖や結び目…炭素を骨格にさまざまな形

 鉛筆の芯の材料である黒鉛は真っ黒で、ダイヤモンドは透明。黒鉛は柔らかく、ダイヤモンドはとても硬い。黒鉛は電気をよく通すが、ダイヤモンドは全く通さない。

 このような性質の違いは、形の違いから来ている。黒鉛は、炭素原子が蜂の巣の断面のように六角形を連ねた平面構造をつくる。ダイヤモンドは炭素原子が正四面体の立体構造でつながっている。

 このように、同じ原子でできているが性質が異なる物質を「同素体」と呼ぶ。ナノサイズの筒であるカーボンナノチューブや、サッカーボール型分子とも呼ばれるフラーレンも、炭素の同素体だ。

 この夏、この仲間に奇妙な新顔が加わった。一つは鎖のような形。もう一つは結び目のような形だ。炭素と水素が亀の甲のように連なる「ベンゼン環」でできている。水素原子がくっついているので同素体とは言えないが、骨格は炭素原子だ。

 名古屋大の伊丹健一郎教授らのグループが合成し、米科学誌サイエンスに発表した。グループはこれまでも、リング、ベルト、リボン、かごなどさまざまな形の炭素を骨格とする分子を作ってきた。瀬川泰知・特任准教授は「今回は鎖と結び目を作ったが、もっといろいろな炭素の構造を作りたい」という。

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 奇妙な形といえば、米化学会…

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