人命救助を罰するのか 欧州で批判、難民受け入れに道

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ブリュッセル=津阪直樹 ベルリン=野島淳 仏南部マルセイユ=河原田慎一
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 地中海を渡って欧州に向かう難民・移民の受け入れを分担する枠組みづくりが、欧州連合(EU)で議論されている。海上で難民船の救助を続けるNGOがかかわったある「事件」が国際的に注目を集め、議論を呼び起こした。

 国連難民高等弁務官事務所UNHCR)によると、今年1月から今月3日までに中東やアフリカから地中海を渡ったのは約6万5千人。1041人が死亡または行方不明になったと推定されている。

 移民の増加を懸念する世論の高まりを受け、玄関口となるイタリアやマルタは近年、移民・難民の上陸を厳しく制限してきた。イタリアでは6月、海上で難民を救助するNGOの活動を違法とする法も施行。「難民申請は最初に上陸した国で行う」とするEUの「ダブリン規則」により、地中海沿岸の国々に負担が集中する事情もある。

 だが、イタリアで9月に新連立政権が誕生し、移民排斥を訴えた右派政党「同盟」が連立与党から外れた。続投したコンテ首相はNGO救助船の入港を認める方針に転じた。イタリアとドイツフランス、マルタの4カ国は受け入れを分担する方針でも合意した。

 ルクセンブルクで8日にあるEU内相理事会では、ほかの加盟国にこの枠組みへの参加を促す。ハンガリーなど一部の東欧諸国は負担増を拒んでおり、どれほど賛同が得られるか不透明だが、EU高官は「加わる国が多いほどインパクトを持つ。ダブリン規則の見直しに向けた一歩にもなる」と期待を込める。(ブリュッセル=津阪直樹)

漂流した難民船助けたら…

 難民受け入れで協調する議論を加速させたのが、リビア沖の「捜索救助地域(SRR)」と呼ばれる海域で6月、木造船やゴムボートに乗った難民・移民を救助していたNGOの船が起こした「事件」だ。

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 リビア沖で53人を救助した…

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