オーストラリアのシンボル的存在のコアラが、意外な病気に苦しんでいる。人間もかかる性感染症のクラミジアだ。コアラの場合は命にかかわる。同国に生息する動物のなかでカンガルーと並ぶ人気を誇る、愛くるしい森のアイドルを守ろうと、人々の努力が続く。(ポートマッコリー=小暮哲夫)
シドニーから北東に約400キロのポートマッコリー。世界で唯一のコアラ専門病院の診察台で、野生のメスのコアラが毛布にくるまれていた。目に炎症があり、内陸の山村から車で搬送されてきた。
「結膜炎で心拍数も低く、かなり体温が下がっている。深刻度を1から10で示すと、9くらい」。シェイン・フラナガン診療部長は厳しい表情だ。コアラの結膜炎の原因は、クラミジアが強く疑われる。このコアラには脱水症状もあり、電解水が与えられていて、泌尿・生殖器や腎臓の病気の可能性もあるという。
コアラ病院は1973年、主な生息域の豪東部にあるこの町の商店主の夫婦が創設した。搬送されるのは年間200~250匹。車にひかれたり、野犬に襲われたりといった例もあるなか、クラミジア感染が全体の5、6割を占める。
主に性交で感染するコアラのクラミジアは、結膜炎を放置すれば失明し、メスが不妊症になることも多く、種の保存に影響する深刻な病気だ。クラミジア科の細菌でも、コアラには、ヒトにうつるものとは違う種類のものが感染する。
結膜炎は早期発見なら目薬で治り、野生に戻れる。ただ、泌尿・生殖器の病気の薬は、えさのユーカリの葉に含まれる毒を解毒するコアラ独特の腸の機能を奪う副作用が出てしまう。特効薬はなく、症状を薬などで改善できなければ病院で一生を終えるしかないという。
フラナガンさんは、クラミジ…
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