最高裁に破られた市民感覚 裁判員判決「軽く見られた」

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阿部峻介
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「社会に警告を」心に決めた

 1歳8カ月の女の子の上半身には複数のあざが残っていた。体重は、標準を大きく下回る6・2キロ。写真を見た裁判員の男性は心に決めた。「最大のよりどころであるはずの親からの虐待は殺人に近い。社会に警告を与えないといけない」

 大阪地裁で2012年にあった傷害致死事件の裁判。無罪を主張する両親に、この裁判員らが出した結論は懲役15年だった。検察が求めた懲役10年の1・5倍という異例の重さ。判決理由には「児童虐待が大きな問題と認識されている社会情勢も考慮すべきだ」と盛り込んだ。

 裁判員の怒りが込められた判決は二審でも維持されたが、2年後に上告審で破られた。最高裁は「他の裁判との公平性」を重視し、一審について「これまでの量刑の傾向から踏み出す具体的な根拠が示されていない」と判断。両親の刑をそれぞれ懲役10年と8年に下げた。最高裁が自ら、裁判員裁判の結論を見直したのは初めてだった。

「被告や証人と直接向き合った」のに

 市民感覚が裁判に入れば、量刑の相場が変わる――。当初から予想された影響だ。実際、子どもや女性が被害者になる虐待や性犯罪では重くなる一方、介護疲れをきっかけとした殺人などは刑が軽くなった。

 その市民感覚に基づいた量刑が最高裁で否定された。裁判員だった男性は「我々は最高裁と違って被告や証人と直接向き合った。軽く見られたようでとても残念だ」と漏らした。

「法律が分からないので感情が」

 市民感覚の影響は、量刑にとどまらない。

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