「犬ケ島」からサザエでございます!(小原篤のアニマゲ丼)

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 前回の本欄は「お気楽に」やろうなどと言っておきながらかなりの長文になってしまったので、今回こそサラッと。5月25日から公開中の人形アニメ映画「犬ケ島」のレビューです。いつものウェス・アンダーソン監督らしく、(ミニチュア)セットの作り込みと細部に込めたお遊びで楽しませてくれますが、それに加えて本作は、動物たちの「演技をつけ過ぎない」演技と、パキパキッとしたコマ撮りアニメーションの動きにより、オフビートなセンスが冴(さ)えわたっています。

 思い返すに、同監督が2009年に完成させた人形アニメ映画「ファンタスティック Mr.FOX」は、キツネの表情が豊か過ぎましたね。造形も愛敬ありすぎ。今回の犬たちは、とぼけて、テンション低めで、はぐれもので、無表情というか仏頂面が多く、ぼんやり前を見つめる目はもの悲しく切なげで、しかし皮肉や冷笑やあきらめのベールの下にイノセンスがある。にこやかで愛くるしいかわいさでなく、自らの感情を扱いかねて困惑する様がかわいい。つまりアンダーソン監督作品の常連、ビル・マーレイさんです。主人公の少年を助ける犬グループの1匹「ボス」の声にマーレイさんがキャスティングされていますが、私には何だかみんなマーレイさんのバリエーションに見えました。

 物語の舞台はレトロフューチャーでキッチュな味わいの日本・メガ崎市。犬たちに「ドッグ病」が蔓延(まんえん)し、小林市長は全頭を無人の「犬ケ島」へ追放する。孤児から市長の養子になった12歳のアタリ少年が、愛犬スポッツを救いに小型飛行機で単身島へ。過酷な環境を生き抜くチーフ、レックス、キング、ボス、デュークの5匹の助けを得て、広大なゴミ捨て場や遊園地の廃虚などを捜し歩く。一方メガ崎市では、ドッグ病の治療法を見つけた渡辺教授らを小林市長が弾圧し、人々の嫌犬感情をあおって再選を果たす陰謀を進めていた!

 実写作品では美しいシンメト…

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