「認知症フレンドリー」とは 英国で始まった無数の試み

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山本雅彦
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両親の介護と仕事と認知症:5(マンスリーコラム)

 朝日新聞厚生文化事業団に異動したのは2014年4月。社会福祉は全くの素人だったが、大阪事務所が高齢者を対象とした講演会などの企画を担っていたのは幸いだった。長年、両親の介護を経験してきた私にとって、全く無縁の世界ではなかったからだ。

 今年4月、京都で「国際アルツハイマー病協会(ADI)国際会議」が開催されるのを機に、プレイベントとして、2月に東京と大阪で国際シンポジウム「認知症になっても安心して暮らせる街~認知症フレンドリーコミュニティー~をめざして」を開いた。英国アルツハイマー協会のジェレミー・ヒューズ会長に基調講演を依頼した。

「DFC」を視察

 昨年11月、英国に出張した。英国人講師陣との打ち合わせと、「認知症フレンドリー・コミュニティー(Dementia Friendly Community=以下DFC)」というテーマについて、現地の状況を視察するためだ。

 DFCは英国で始まった取り組みだ。自治体や地域など、各コミュニティー内に存在する商店や交通機関といったさまざまな事業者やNPOが、認知症の人が必要とする「サービス」は何かを考え、それを提供する。コミュニティー内に各事業者のネットワーク(Dementia Action Alliance=認知症アクションアライアンス)が構築できれば、認知症の人にやさしい街が出来上がるというコンセプトだ。

 たとえ認知症になっても、これまで通り地元でスポーツジムに通い、スーパーで買い物もする。バスに乗ってお気に入りのレストランに出かける……。簡単に言えば、認知症の人が暮らしにくいバリアーを除いていく取り組みだ。

 英国では、アルツハイマー協会の主導により、既にマンチェスターやリバプール、リーズ、プリマスなどで約250の地域がDFCに認定されている。欧州各国にも広がりつつあり、ベルギーのブリュージュなども注目されている。

 日本でも京都府宇治市や東京都町田市福岡県大牟田市などがこの考えを取り入れ、「認知症フレンドリー」な街づくりを進めている。

 DFCを構成する各事業者には、スーパーマーケットやスイミングプール、劇場、バス、空港など多くの業種が含まれる。事業者たちはそれぞれに認知症の人にやさしいサービスの提供者であることをアピールしている。

 DFCについて、私は日本の研究者の方から教わった。しかし実際に現地で見て、目からうろこが落ちる思いだった。

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