京のシンボル、空からぐるり ドローンで迫る秋の文化財

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フリーライター・桝郷春美
【動画】東寺の五重塔=長島一浩、内田光撮影
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 秋の「京都非公開文化財特別公開」(京都古文化保存協会など主催、朝日新聞社特別協力)が11月1日(一部10月28日)に開幕します。公開に先駆けてフリーライターの桝郷春美さんが、見どころの一つ東寺(京都市)を訪ね、その魅力を紹介します。

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 京都の始まり。かつては平安京の入り口で都を護(まも)り、現在は京都の街のランドマークとして広く親しまれている東寺。この京都で最も古いお寺で、この秋も講堂と五重塔が特別公開されます。どちらも弘法大師空海が手がけた真言密教の世界観を表した内観で、とりわけ講堂内の立体曼荼羅(まんだら)は圧巻です。

 「21体の立体曼荼羅を正面だけでなく、背後まで回って360度見られるのは秋の『非公開文化財特別公開』だけ。仏様の多面的な魅力を知って頂きたいです」と主催の京都古文化保存協会の茂貴広さん。特別公開では、そんな普段は入ることのできないバックステージツアーに参加するような特別感があります。

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 特別公開に先がけ、東寺総務部の拝観・営繕課長、山下泰永(たいえい)さんと僧侶の小宮大良(たいら)さんに話を伺い、案内して頂きました。

 東寺の魅力について、「捉え方が何面もあります」と山下さん。「1200年以上もの間、同じ場所、規模で存続しています。その中で、足利尊氏が本陣を置いたり、織田信長が宿所にしたりと歴史上の人物が過ごされてきた場所であり、また弘法大師空海が作られた建造物や仏像も魅力。ご興味を持たれるのは、どの入り口からでもいい。曼荼羅も同じです。いろんな仏様がおられますし、言葉で説明できるものではなく感じるものではないでしょうか」

国立の寺院を密教の道場に

 真言宗総本山である東寺は、弘法大師空海によって日本で初めて誕生した真言密教のお寺です。

 密教とは秘密の教えの意。言葉で説き示す顕教に対して、言葉だけでは表せないものを伝える仏教。(国の)官寺として創建された東寺を、823年に嵯峨天皇から託された弘法大師空海は、真言密教の根本道場としてつくり変えていきました。

 その後、正式名称を教王護国寺とし、講堂や諸仏、五重塔の造営を手がけ、寺域全体で密教世界を表しました。その中心的な建物が講堂です。

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 今回の特別公開では、講堂に入り、至近距離から21体の仏像で表現される立体曼荼羅を拝観することができ、さらには基壇(仏像群)の周囲を360度一周することができます。

 曼荼羅とは、『本質を有するもの』という意味です。一般的には絵で表現されることが多い曼荼羅を、東寺講堂においては、弘法大師空海が『金剛頂経』『仁王経』などに基づき、21体の仏像で立体的に表現されました。

 大日如来を中心とした五智如来をはじめ、菩薩(ぼさつ)、明王が5体ずつ、両側に梵天、帝釈天、四天王を配する独特の構成で、この立体曼荼羅の形成が言葉だけでは表せない弘法大師空海の真言密教の思想を可視化しているのです。

 そのうちの15体は平安時代前期の弘法大師空海による造営時のもので、21体すべてが国宝または重要文化財に指定されています。

■ハンサムな仏様、帝釈天…

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