枕元に服、助かった命… 1.17「自分のこととして」

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筒井竜平
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 枕元に翌日の服を置いて寝る――。神戸市長田区で明治期から続く酒屋の3代目、戸田一弘さん(79)の習慣だ。

 戦時中、空襲に備えて両親から教わり、体に染みついた。1995年1月17日の朝、店舗2階の寝室の枕もとには、黒いセーターをたたんでいた。

     ◇

 「電気つけて!」

 隣で寝ていた妻の声で目を覚ました。手を伸ばしたが、蛍光灯がない。激しい揺れでコードが切れて落ちていた。真っ暗の中、柱に抱きついた。

 揺れがおさまると、すぐに肌着の上に枕元のセーターを重ね、綿ズボンをはいた。木造2階建て住宅の一部は倒壊。階段が崩れ落ちていたため、梁(はり)をつたって裸足のまま外へ出た。

 家々が崩れた街を、夢中で走り回った。梁に足を挟まれた近所の女性を救出。別の家から泣き続ける幼児を運び出した。

 数時間が過ぎて、ようやく「…

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