夏目漱石「門」(第七回)三の一

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 宗助と小六(ころく)が手拭(てぬぐい)を下げて、風呂から帰って来た時は、座敷の真中に真四角(まっしかく)な食卓を据えて、御米(およね)の手料理が手際(てぎわ)よくその上に並べてあった。手焙(てあぶり)の火も出掛(でがけ)よりは濃い色に燃えていた。洋燈(ランプ)も明るかった。

 宗助が机の前の坐蒲団(ざぶとん)を引き寄せて、その上に楽々と胡坐(あぐら)を搔(か)いた時、手拭と石鹼(シャボン)を受取った御米は、

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 「好(い)い御湯だった事?…

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