鬼才が描く百合モノ くうのむところにたべるとこ(ヤマシタトモコ)

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 【松尾慈子】ヤマシタトモコは本当に鬼才だ。青年誌での連載「BUTTER!!!」(講談社)では高校生のダンスにかける熱い青春を描き、「さんかく窓の外側は夜」(リブレ出版)では、BLの元祖ともいえるBL雑誌「BE×BOY」での連載ながら一般向けの上質なホラーミステリー作品に仕上げている。だが、今回の「くうのむところ……」には、オムニバスながらも、なんと百合(ゆり)カップルが主役級で登場するのである。女同士の恋愛・百合モノは得てして、かわいらしい砂糖菓子のような作品ばかりで、私にとっては「食い足りない」ような作品が多かったのだが、ヤマシタのような鬼才が百合を描いてくれるなら、百合モノの裾野が広がり、作家、読者ともに広がってくれるだろう、と強く期待するのだ。もちろん、男女の恋愛も登場するが、一筋縄ではいかないのが、ヤマシタらしい。

 「焼き肉屋に一緒に来る男女はデキている」という通説がある。第1話から登場するくだんの女性2人は、焼き肉屋でガツガツ肉を食べている。だがまだ2人はデキていない。一方はめっぽう美人、もう片方はまあ、ややぽっちゃりな普通の女の子。美女は魅惑的な表情で言う。「知ってる? 肉に含まれるコレステリンと性欲の関係」。性欲を刺激する性ホルモンは、肉の中に多量に含まれているコレステリンから作られているという話だ。だが女の子は「その話はあんたと焼肉に来るたび聞いてる」とばっさり斬る。美女が誘い、女の子はのらりくらりとかわすが、美女を憎からず思ってる。そうだよねえ、デキる前の距離感って、緊張しながらも楽しいよねえ。8ページながらも、読んでいてニヤニヤさせられる。

 第10話に登場する、巨乳の女性も秀逸だ。「体だけ 見られることには慣れている」。女性の胸はなんとHカップ。実にでかい。ウエーターが注文を取りに来て、顔も見ずに胸を見て去るのにも、「乳とのみ会話をしてゆく者もしばしば」と平然としている。その後、巨乳女性の隣に貧相な体格の女性が座り、通りすがりの男がその2人の女性をちら見してナンパするのだが、その判断がまた、おお!という展開につながる。

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 私自身は驚くほどの貧乳なの…

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