【解説】


 来春に卒業する大学生の就職活動はもう終盤戦でしょうか。今年から、面接など選考活動の開始は4月から8月に、4カ月遅くなりました。

 戦前から採用時期に関してルールを設けている企業もありましたが、国、大学、経済界の3者が協議し、時期などを定めたいわゆる「就職協定」ができたのは約60年前の1953年のことでした。ただ、罰則がなかったため、優秀な人材を確保しようと「抜けがけ」する企業が後を絶たなかったそうです。今回紹介するのは、協定が始まって4年後の紙面です。

 当時、学生の多くは大学からの推薦によって就職先が決まっていたそうです。紙面によると、日経連(日本経営者団体連盟。2002年に経団連と統合)と文部省(現・文部科学省)はこの年から、学生の推薦を4年生の10月1日以降(事務系)、試験期日を10月10日以降(同)と申し合わせたようですが、推薦がようやく始まったばかりの5日には、もうこんな協定破りの記事が登場しました。

 当時は戦後の復興や朝鮮戦争特需による好景気でした。「協定破り」が出た背景には、人手不足を解消しようと企業が早めに人材確保に動いたことがありそうです。

 記事を点検してみましょう。「文部省の調べでは~」で始まる段落の最後の文章は、「ある会社の場合は、身体検査にきた受験生から『十日の試験日には他の会社に行かない』という誓約書をとっているところもある」とあります。「ある会社の場合は」で始めるなら文末は「とっている」、文末が「とっているところもある」なら「ある会社の場合は」は不要でしょう。どちらかにしてはと提案してみます。

原文どおりに表記することを原則としますが、読みやすさの観点から

・漢字の旧字体は新字体に
・句点(。)を補った方がよいと思われる部分には1字分のスペース
・当時大文字の「ゃ」「ゅ」「っ」等の拗音(ようおん)、促音は小文字に

等の手を加えています。ご了承ください

菅野 尚(すがの・なおし)

東京都出身、バブル末期の1991年入社。大阪を中心に西日本を回る。釣りやダイビングに目覚め、魚の生態観察に癒やされる。最近はスポーツジムで泡風呂にひたり、その後はビールの泡におぼれる日々を送る。