(Side Change)J1昇格争い、古巣への思いは 潮智史=訂正・おわびあり

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 J1への昇格枠は残すところ、あとひとつ。J2の3~6位が争うプレーオフでは、26日にある準決勝の東京ヴェルディジェフ千葉が気になる。

 ともに30年前にプロリーグ化した時に参加した「オリジナル10」。東京ヴは2008年、千葉は09年を最後にJ1の舞台から遠ざかっている。

 この巡り合わせをどう感じているのか。両クラブをよく知るひとを東京ヴに訪ねた。江尻篤彦強化部長(56)だ。

 千葉前身の古河電工時代からプレーし、指導者としても千葉で長い時間を過ごした。09、19年とシーズン途中で監督が解任されるとチームを任された。火中の栗を拾った男として、クラブの歴史に刻まれている。

 現職に就いたのは3年前になる。「最初は孤立していた。なにをするにも衝突ばかりだった」と振り返る。

 サッカー観もしきたりもまるで違う。就任した20年に自分を呼んだ社長が退任し、自らも辞めようと考えたが、残った。強化費は乏しく、チームも経営も再建に踏み出したタイミングだった。

 選手を評価するもの差しをそろえるのにも時間はかかった。前身の読売クラブ時代からボール扱いに優れた選手を生み出してきた。遺伝子は尊重するが、それ以前にあるべきサッカーの本質がおろそかになっていないか、と問いかけた。

 考えを語る自身の言葉に説得力を与えてくれたのは現役時代の体感だ。日本リーグ時代の終盤、ラモス瑠偉らを擁する読売クラブと対戦して力の差を味わった。「技術以前に、したたかで勝負とボール争奪に執着していた」。なにより、役割を全うするプロ意識の高さを思い知った。

 変革を進めながら、選手育成という強みは磨き続けている。城福浩監督と話し合い、生え抜きや若手に出場機会を作る。育てた選手を抜かれる移籍金が収益の柱になった。

 外様の立場で学んだことも多い。クラブハウスには古くからアカデミーと女子が同居している。トップと各部門の選手が触れ合い、応援し合う日常が最初は異様な光景に映った。「上から下までの分け隔てないつながりは財産。ずっと失いたくない」

 さて、古巣相手の決戦になにを思うのか。「このクラブをどう次につなげていくか。全力を尽くして戦うこと以外に関心はない」。拍子抜けするほどの素っ気ない答えだが、切実な思いだ。

 <訂正して、おわびします>

 25日付の記者コラム「Side Change」で、「柱谷哲二らを擁する読売クラブ」とあるのは誤りでした。柱谷の当時の所属は「日産自動車」でした。

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