(社説)子どものSOS 大人が連携し見守ろう

社説

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 子どものSOSに、どうしたら気づけるだろうか。

 22年の自殺者数は2万1881人で、前年より4%増えたと厚生労働省が発表した。このうち小中高生は統計のある約40年間で最多の514人に上った。

 例年、10~19歳の死因で最も多いのは自殺だ。同省のまとめでは、主要7カ国(G7)では日本だけの現象だという。学校や家庭を中心に、子どもの周りにいる大人が連携して早めに兆候をつかみ、命を救う適切な対応をする必要がある。

 小中高生は、これまで最多だった20年を15人上回った。原因で最も多いのは例年と同じ「学校問題」で、「学業不振」や「進路の悩み」「学友との不和」などに分類される。「親子関係の不和」など家庭問題を苦にした例も多い。今回は、男子高校生が増えたのも特徴だ。

 専門家は、親の期待に沿えない、受験して入った学校の勉強についていけない、といった悩みが目立つとする。ただ、複数の原因が複雑にからまったり、長期間悩んでいたりして、動機が特定できないことも多い。

 小中高生の自殺は、特にコロナ禍が始まった20年以降、高い水準が続いている。

 家にいる時間が増えたことで家族関係がぎくしゃくしたり、ゲームなどに没頭して生活習慣が乱れたりした子どもが増えた影響が指摘されている。悩みを相談できる友人を作れず、精神的に不安定になったまま回復できなかった例もあるとされる。

 小中高生の異変は、学校で担任や養護教諭らが気づくことが多い。教員が子どもと十分に向き合うことが基本だが、一人ひとりに配られた情報端末への書き込みなどから兆候をつかめることもある。電話やSNSを使ったSOSの出し方を教えることも有効だといわれている。

 だが、複雑な家庭の問題で悩んでいる子や、医療的なケアが必要な心の病を抱える子も少なくない。学校だけで対応しようとしても限界がある。

 スクールカウンセラーが相談に乗り、スクールソーシャルワーカーが医療や福祉と適切につなぐことが大切だ。国や自治体は教員の働き方改革を進めるとともに、こうした専門家が各学校に滞在できる時間を増やせるように、手厚く配置する努力を続けなくてはならない。

 SNSで相談を受け付けたり、「いのちの電話」(0120・783・556 毎日午後4~9時)のように電話で相談に乗ったりする支援団体や、子ども食堂など地域住民との連携も欠かせない。学校はこうした外部の人たちと、スムーズに情報を交換できる関係をふだんから築いておく必要がある。

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