(語る 人生の贈りもの)天童よしみ:13 娘の一言信じた母と二人三脚で=訂正・おわびあり

語る 人生の贈りもの

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 ■歌手・天童よしみ

 〈父の義行さんが2008年に亡くなり、母の筆子さん(89)とふたりで暮らしている〉

 子どものときから見ていた父の背中を失い、「これからどうしたらいいんだろう」と心細くて。そんなとき、強くなれたのは母がいたから。母の前では号泣しないぞ、と誓ったんです。風呂場のシャワーの音にまぎれて、たった一度だけワーッと泣きました。

 母はこの2年くらいケガが続き、杖がないと歩けないので、サポートをしながら暮らしています。

 家にはふたりのネイル箱がそれぞれあって、白やピンクを混ぜて「この色いいと思わへん?」って遊んでいます。最近はライブでも自前です。赤を塗って、キラキラもつけて楽しんでいます。

 新曲を出すときは、母にも歌を覚えてもらうんです。母のボイストレーニングみたいな意味合いもあるんですよ。「電話するときも、『はいっ、もしもし』と高いトーンでなるべく元気にね」と伝えています。

 母は小さいときから、いつも私の手を引いて、あちこちのオーディションやのど自慢に連れて行ってくれました。「歌手になりたい」という娘の一言を信じて、一緒に歩いてくれたんです。感謝しかありません。

 〈弟子は、おおい大輔さんただひとり。付き人を14年つとめて、1999年にデビューした〉

 彼が20代のとき、健康ランドで前歌を歌ってくれたのが始まりです。歌に間違いが多くて怒っていたら、母が「教えてあげたら?」と。そして「天童が教えると言っているから、おいで」と名刺を渡したんです。

 あくる日、レッスンをしてみると、なかなか節回しもいい。「歌手になるのは簡単ではないよ」と言ったけど、「そこをなんとか頑張ります」と真剣なんです。かばんを持つにも、なで肩だからストンと落ちる。失敗もあるけれど、いつまでも追いかけてきます。和気あいあいとやっています。(聞き手・杢田光

 <訂正して、おわびします>

 ▼14日付文化面「語る―人生の贈りもの―天童よしみ<13>」の記事中、「名詞を渡した」とあるのは「名刺を渡した」の誤りでした。

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