強豪次々破り、中川さん2度目V 第44回朝日アマチュア将棋名人戦全国大会

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 第44回朝日アマチュア将棋名人戦全国大会(朝日新聞社主催、日本将棋連盟後援、日本アマチュア将棋連盟協力)が5、6の両日、東京都港区のチサンホテル浜松町で行われ、西東北ブロック代表の中川慧梧選手(29)=山形県天童市=が2度目の優勝を果たし、横山大樹・朝日アマ名人(31)への挑戦権を獲得した。強豪がひしめく「鬼ブロック」を勝ち上がり、充実ぶりを印象づけた。

 ■元奨励会との3局しのぐ/三番勝負は同窓対決

 コロナ禍の影響で今大会は、当初の代表選手が出場を辞退するブロックが二つ生じた。それでも、共に別の選手が代わりとなり、例年通り32人が出場。実際に将棋盤を挟んで競い合う場の意義を改めて感じさせる大会となった。

 年代別では、20代が最多の15人で、30代が9人、10代、40代、50代、60代が各2人。首都圏ブロック代表の小山怜央選手(28)と南東北ブロック代表の小山真央選手(23)は兄弟での出場を果たした。

 初戦から実績のある選手の敗退が目につく中、実力を遺憾なく発揮したのが中川選手だった。1日目の3局の相手は、いずれも棋士養成機関「奨励会」の元三段。厳しい当たりを勝ち抜いて勢いに乗り、頂点に立った。残る主要タイトルは朝日アマ名人だけとなっている北部九州ブロック代表の早咲(はやさき)誠和選手(48)は準決勝で敗れたが、健在ぶりを印象づけた。

 中川選手は昨年、東京から山形に移住し、将棋の駒の産地として知られる天童市の職員として働く。6月にある横山朝日アマ名人との三番勝負は、立命館大学OB同士の対決となる。

 中川選手の準決勝と決勝の対局は、ユーチューブ「囲碁将棋TV―朝日新聞社―」で視聴できる。村瀬信也

 ■好機逃さず「焦点の歩」

 4強入りしたのはともに全日本アマ名人戦優勝などの実績がある中川、早咲両選手と、ともに初出場の竹川和(やまと)、石井紀彦両選手。6日午前の準決勝で中川選手が早咲選手を、竹川選手が石井選手をそれぞれ破った。

 午後の決勝は相懸かりの戦型に進み、中川選手が中盤、隙を突いて角を打ち込んだ。自陣に馬を作られた竹川選手は「指しにくさを感じた」という。△5四角(42手目)と打って対抗したが働きが悪く、「苦戦を意識した」。攻めを見せて△8五銀(46手目)と打ったが、これが悪手だった。

 次の中川選手の▲4三歩(途中図)が厳しかった。四つの駒が利いている箇所に打った「焦点の歩」で、△4三同玉は▲4一銀、△同金左は▲2三飛成、△同角は▲4五歩~▲4四歩がある。竹川選手は△同金右と取ったが、以下▲5二銀(詰めろ)△3三玉▲4三銀成△同角▲同馬△同金▲7五金△8二飛▲8五金△同飛▲4一角で中川選手が勝勢を築いた。63手で竹川選手が投了した。

 中川選手は第39期の三番勝負で当時の稲葉聡・朝日アマ名人に敗れた。「歴代の朝日アマ名人はアマを代表する方々ばかり。自分もそこに加わりたい」

 村上耕司

 ■女性代表・磯谷さん1勝、史上2人目

 女性代表の大学1年、磯谷祐維(いそやゆい)選手(19)=東京都=は、1回戦で全日本アマ名人戦で準優勝の実績がある南部九州ブロック代表の久保田貴洋選手(29)に快勝。女性では第41回大会の野原未蘭(みらん)現女流初段(18)以来、大会史上2人目の勝利を挙げた。

 2回戦は、北部九州ブロック代表の山崎由太郎選手(35)に逆転負けした。1回戦と同様、相手の振り飛車穴熊に右玉で対抗。猛攻に耐えて反撃し、勝勢を築いたが、秒読みに追われ、受けるべきところで攻めて、詰まされてしまった。終局後、「勝ちがあったのになあって思って……。すごく悔しい」。ただ「1回戦で強豪に勝ち、自分の実力では相当にいい結果を残せた」と振り返った。村上耕司

 ■中1・中村さん「雰囲気違って緊張」

 最年少の中国ブロック代表の中学1年、中村諒久(あきひさ)選手(13)=山口市=は、1回戦で首都圏ブロック代表の渡部壮大選手(35)に敗れた。「入玉の形になったとき、攻めが半端になって悪くしてしまった。どちらに専念するか判断するべきでした」と悔やんだ。

 小学生大会では全国出場の経験があるが、年齢不問の大会では初めて。「年上の人ばかりで(小学生大会と)雰囲気が違い、緊張した」とふりかえる。

 5歳で祖父母から駒の動かし方を習い、いまは主にネット対局やソフトで勉強している。「奨励会に入ってプロをめざしたい気持ちがある。もしまた全国大会に出られたら、次はもっといい結果を残したい」と話した。(尾崎希海)

 ■最年長・永森さん「対局できて満足」

 最年長の四国ブロック代表、永森広幸選手(67)=高知県香美市=は8回目の出場。1回戦で敗れたが、「対局できて満足」と笑顔で話した。

 コロナ禍のため前回と今回の対局は非公開だったが、それ以前、永森選手は「勉強のため」、高知から上京していたという。「観戦していた大舞台で、自分が対局できて、ますます勉強になりました」

 対戦した首都圏ブロック代表の菊地裕太選手(38)は元奨励会三段の強豪。苦戦の中、永森選手が放った勝負手に、菊地選手の応手が「うまい手で、その後はこちらの読みが狂ってしまった」と永森選手。「感想戦でも、いろいろ教えてもらえました。次回も頑張ります」と元気に話した。(佐藤圭司)

 ■上位8人、プロアマ戦への抱負

 8強入りした選手はプロ公式戦第16回朝日杯将棋オープン戦にアマ代表として出場する。

 ◇中川慧梧選手=優勝

 朝日杯のプロアマ戦出場は4度目。これまでは3連敗。アマ代表として出るからにはぜひ勝ちたい。

 ◇竹川和選手=準優勝

 プロと対戦するのは初めてなので実力を出し切れるよう、後悔のない将棋が指せればと思う。

 ◇早咲誠和選手=3位

 プロとの公式戦は久しぶり。精いっぱい力が出せるように、対局に向けて気持ちを作っていきたい。

 ◇石井紀彦選手=4位

 プロに教えてもらう機会は貴重なので、しっかりと準備する。形勢がよくなくても、粘り強く指したい。

 ◇小山怜央選手=8強

 プロとは朝日杯将棋オープン戦で5局指しているが未勝利なので、食らいついていきたい。

 ◇中拓海選手=8強

 出場5回目でようやく、目標だった8強入りができた。しっかり準備して、自分らしい将棋を指したい。

 ◇福間健太選手=8強

 朝日杯プロアマ戦出場は2回連続。前回は高田明浩四段に完敗。次は見せ場くらい作れたら。

 ◇山崎由太郎選手=8強

 プロの棋譜で勉強しており、あこがれでしかない。自分の力を高め、恥ずかしくない将棋を指したい。

 〈決勝棋譜〉先手・中川慧梧、後手・竹川和 ▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲3八銀△7二銀▲9六歩△3四歩▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8四飛▲2八飛△2三歩▲4六歩△4二玉▲4七銀△6四歩▲5六銀△6三銀▲7六歩△5四銀▲6八玉△9四歩▲4五銀△同銀▲同歩△5二金▲4四歩△同角▲同角△同歩▲7二角△9五歩▲6一角成△5四角▲9五歩△9七歩▲同香△8五銀▲4三歩(途中図)△同金右▲5二銀△3三玉▲4三銀成△同角▲同馬△同金▲7五金△8二飛▲8五金△同飛▲4一角△4五飛▲4六歩△同飛▲2三角成まで、63手で中川選手の勝ち

 ■出場選手一覧

【北海道】大澤啓二(26)初出場、金内辰明(45)15回目

【北東北】昆隆志(39)初出場

【南東北】小山真央(23)初出場

【西東北】中川慧梧(29)7回目

【北関東】三村駿(26)初出場

【首都圏】遠藤正樹(55)6回目、菊地裕太(38)2回目、小山怜央(28)6回目、銭本幹生(25)初出場、長岡俊勝(54)7回目、本間青磁(28)2回目、渡部壮大(35)4回目

【富士】山下祥(36)初出場

【信越】奥村龍馬(37)6回目

【東海】竹川和(24)初出場、水谷創(33)5回目

【北陸】宮越淳(27)初出場

関西】石井紀彦(25)初出場、慶田義法(29)初出場、中拓海(28)5回目、福間健太(33)3回目、森下裕也(36)4回目

【中国】中村諒久(13)初出場、松本誠(65)2回目

【山陰】岸本裕真(20)初出場

【四国】永森広幸(67)8回目、山本健太(26)2回目

【北部九州】早咲誠和(48)10回目、山崎由太郎(35)3回目

【南部九州】久保田貴洋(29)3回目

【女性】磯谷祐維(19)2回目

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