(EYE モニターの目)今月のテーマ:台風15号報道

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 ■行政の対応、総括する責任

 台風15号には改めて自然の猛威を知らされた思いだが、今回の千葉県の被害の多くは行政の油断も大きく関わっていると感じた。不思議に思ったのは台風直後、千葉県の森田健作知事の動向が朝日をはじめ、ほとんどメディアに表れないことだった。県知事の動向は県民にとっての最大の関心事の一つであり、もう少しきめ細かく追跡してもよかったのではないか。今回の件をこの先の対応に生かすためにも、県知事をはじめとした行政の総括をメディアが促すべきだろう。(佐藤厚 58歳 千葉県)

 ■環境重視、新聞が先導して

 千葉県に住みながら幸い停電・断水もなかったので、新聞を読んでいても、最初は電車の運行に支障が出た程度だとしか思わなかった。停電すると、水も使えなくなる地域があることを初めて知った。今後、何かあっても短時間で復旧できる仕組みを早急に全国的につくらなくてはならない。今以上の便利さを求めるより、腹八分目の生産・消費活動に転換すべき時ではないか。使い捨てでない暮らしへ。地球環境が崩れるのを少しでも止めようという流れを新聞から起こしてほしい。(石沢由布子 50歳 千葉県)

 ■足りなかった対策、解明を

 今回の災害で一番感じたことは全容把握の難しさだ。台風による停電は昨年、浜松市に住む私も経験したし、各自治体でも想定済みだと思っていた。しかし、今回の停電では市役所の電話、インターネット、防災行政無線が使えなくなったり、システムがダウンしたりする事態が起こった。災害時に一番大切なことは必要な情報を正確に瞬時に伝えることだ。新聞には全容をしっかり把握し、今後の災害に役立つよう、どんな対策が足りなかったのかを解明していくことを望む。(副島美紀 47歳 静岡県)

 ■被害の把握・報道遅かった

 今回の災害では被害の把握と、それを伝える報道が遅かったように感じる。私は医療関係者だが、9月10日朝の時点で相当数の病院が停電と断水で危機的状況になっていた。9日夕方には病院からの避難も始まっていたと思う。10日から11日にかけての夜中に千葉県内だけでなく、神奈川県内まで転院搬送があったことなど、メディアが拾えなかった事実が多々あったように思う。新聞販売所から情報をもらうなど、地域に密着した情報収集があってもよかったのかなと感じた。(島田哲史 46歳 神奈川県)

 <教訓につながる取材心がけたい>

 台風15号が首都圏を直撃した直後は、鉄柱の倒壊などで直接的な被害を受けた人たちの話や鉄道の計画運休のニュースが記事の中心になりました。多くの人が足止めされた成田空港の様子も詳しく報じました。

 停電が長期化するにつれ、医療機関からの患者の移送や、水を求める人の長蛇の列、通信障害など深刻な状況がわかってきました。房総半島南部に記者が入ると、家屋は甚大な被害を受け、「孤立」状態の集落が点在していました。お年寄りや外国人、子どもたちなど災害時に弱い立場の人たちの取材に力を入れつつ、畜産や漁業への影響も記事にしてきました。

 前線の千葉総局とやりとりをする中で「県の対応が見えない」という話になりました。国や県、東京電力の対応はどうだったのか。県が備える発電機468台のうち、市町村に貸し出したのはわずか6台しかなかったこと、東京電力の復旧見通しが何度も修正された経緯など、関係機関の対応を検証する紙面も作りました。

 今回の台風から学ぶ点は何か。停電時の備えや、情報途絶の原因、あるべき対策など、今後の教訓につながる取材、報道を心がけたいと思います。(社会部次長・泗水康信)

 ◇東京本社発行の朝刊、夕刊の最終版をもとにしています

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