(社説)大停電1年 教訓くみ備えと支えを

社説

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 44人が亡くなった北海道の胆振東部地震から1年がたった。今も仮設住宅での暮らしを余儀なくされる人たちがいる。

 地震直後には、道内ほぼ全域が停電する「ブラックアウト」も起きた。

 教訓をくみ取り、備えと支えを続けていきたい。

 大停電の発端は、北海道電力電力供給の半分近くを頼っていた一つの大型発電所が止まったことだ。そのうえ、本州とつながる送電網が細く、緊急受電もままならなかった。需給バランスが崩れ、機器の故障を防ぐために他の発電所が次々に停止。おおむね全域で復旧するまでに45時間ほどかかった。

 他地域との連係が弱い北海道の特殊事情があったにせよ、他人事と思ってはならない。あり得ないはずのことが起きる。原発事故に学んだはずだ。

 北海道では、本州との間の送電網の増強が進み、需給バランスを保って大停電を避ける強制停電の対応も強化した。昨冬の需要期には別の発電所をすぐ動かせるよう待機させた。

 電源の分散や送電網の整備は全国共通の課題だ。とりわけ送電網の弱さは、分散化につながり、災害対応力も高める再生可能エネルギー導入の足かせでもあった。国民負担を抑えつつ、整備を急ぐ必要がある。

 安定供給は電力会社の使命である。大停電を起こさぬ体制を整えたうえで、もしもの場合の復旧の手立ても、ぬかりなく用意するべきだ。

 突然の大停電は市民生活も混乱させた。信号機が消え、交通が乱れ、携帯電話が充電できず、情報収集できない人が相次いだ。電子マネーも使えず、病院では断水で患者の命に関わりかねない事態も生じた。

 札幌市は小中学校の体育館など避難所となる約300カ所すべてに、対策として非常用発電機の常備を進めている。他の自治体も参考にすべきだろう。

 個人でできる備えもある。食料品や生活必需品の備蓄、カセットコンロの常備などだ。マンションの水道が電気でくみ上げる方式なのかなど、自宅への影響も確認しておきたい。

 厚真、安平、むかわ各町などでは8月末現在で、仮設住宅や民間借り上げなどの「みなし仮設」に、約1千人の被災者が入居している。慣れない生活が長引くと、健康を害する可能性が高まる。恒久的な住まいを確保できるよう、道や地元自治体は支援を急いでほしい。

 被災地は過疎が進み、高齢者も多い。資金的な問題などから新築か賃貸かなど、迷う人もいるだろう。自治体だけでなく、国も人や知恵を出し、仮住まいの解消に努めねばならない。

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