(社説)防災の日 身近なリスクを知ろう

社説

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 活発な前線の影響で九州北部が激しい雨に見舞われた。佐賀県では、水につかった建物や車に取り残される人が相次いだ。雨は週末まで続くという。国・自治体は警戒を続けるとともに、迅速な情報発信に努め、被害の拡大を防いでほしい。

 9月1日は「防災の日」だ。一人ひとりが災害列島に住んでいることを自覚し、身の回りの備えを再確認したい。

 災害は、同じ場所でくり返し起こることが少なくない。

 今回、大規模に冠水した佐賀市中心部は、標高が低い平野が広がり、昔から洪水や高潮に悩まされてきた。昨年の西日本豪雨でも、かねて土砂災害の危険性が指摘されていた地域が大きな被害を受けた。そのひとつ広島県坂町では、1907年に土石流が発生し、地元に歴史を伝える石碑が立っている。

 地域の災害史を学ぶことは、命を守る行動につながる。過去にさかのぼって、「わが町のリスク」を知るようにしよう。

 国土地理院はこの6月、自然災害の記録を刻んだ石碑や供養塔を示す「自然災害伝承碑」の記号を新設した。対象は津波、地震、洪水、高潮、火山災害など多岐にわたる。自治体に情報を提供してもらい、地図に記載する。すでにウェブ版「地理院地図」で運用が始まっていて、アクセスすると、碑の写真や災害の発生年、その内容などがわかるようになっている。

 こうした碑は全国に数千はあるとみられるが、登録されている数はまだ200を超えたばかりだ。さらに充実させ、学校での授業や防災訓練時のまち歩きなどに使って、教訓の共有を進めてもらいたい。

 地球温暖化の影響で、「数十年に1度」とされる雨が、毎年のように全国のどこかで降っている。局地的な豪雨も多い。

 そんなときにどう行動すべきか。参考になるのが、個人や家族単位の避難行動計画「マイ・タイムライン」だ。15年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川が氾濫(はんらん)した際、多くの住民が逃げ遅れた反省から茨城県常総市などの呼びかけで始まり、他の地域にも広がっている。

 例えば台風上陸を想定し、その3日前から時系列で、非常持ち出し袋を準備▽川の水位をネットで確認▽避難情報が出たら近所のお年寄りに声をかけて避難所へ――といった具合に、手順をノートに書き出しておく。地元のハザードマップを頭に入れておくのは言うまでもない。非常時でもあわてず、間違わずに行動するのが狙いだ。

 被害をゼロにはできなくても減らすことはできる。言い古されたことだが、そのために大切なのは、日頃の準備である。

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