(10代の君へ)好きなこと、今はなくても 東出昌大さん

10代の君へ

[PR]

 剣道をして、中学で生徒会をやって、高校でモデルの仕事もして、大学へ行って。箇条書きにすると充実していますけど、10代の頃、僕は「好きなこと」が見つけられませんでした。

 父が剣道を教えていて、小1から道場に通いました。本当にしたいのはサッカー。でも剣道しか道はない。中学はそこから逃げるために生徒会に立候補しました。高校は、ひょんなことから剣道の強豪校へ。でも、当時の僕はレギュラーになれたことに満足して、積極的に頑張りはしなかった。先日、剣道部の顧問の先生に会った時、先生が「もっと頑張れ」と言っていた言葉の意味がようやく分かった、という話をしました。頑張っていると思ってたけれど、後年、本気で取り組んだものができたから分かりました。

 法学部に行って卒業後は警察官に、と想像していました。「この学部に進みたい」とか言う友達を横目に見て、「すごいな」と。だから、好きなことが見つけられない、焦るような気持ちはよく分かります。

 大学2年の夏、アクセサリーショップで働き始めました。何が好きか考えて、「そういえば宝石が好きだ」と思い出した感じです。がんを患う父から「好きな進路があるならそっちに」と言われました。大学はやめ、ジュエリーの専門学校に。学校に通う分、お金はない。1分1秒を大事にしたくて、のめり込みました。人生で初めて自分の意思で頑張ったと言えます。

 本は読んで損はしないと思います。朝井リョウさんの小説「桐島、部活やめるってよ」の中で、校長先生が「みなさんは真っ白なキャンバス。好きに何でも描けるけど、何を描いたらいいのか、想像もできないのがストレス」みたいなことが書かれていて、好きなことは何かと考えていた頃の自分はまさしくそうだったと思いました。

 僕は「純文学をポッケに入れる俺はかっこいい」と思っていました。そんな動機でいいので、ぜひ本は読んで下さいね。

 (聞き手・山下知子)

     *

 ひがしで・まさひろ 俳優 1988年、埼玉県出身。モデルを経て、2012年、「桐島、部活やめるってよ」で俳優デビュー。7~9月、舞台「二度目の夏」に主演。

 ■オススメの本

 18、19歳で読んだ、司馬遼太郎竜馬がゆく

     *

 一青年が、スケールの大きな人間になっていく。胸を膨らませた。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

連載10代の君へ

この連載の一覧を見る