(底流 2019参院選:4)自民「移籍組」、貢献できるか
自民党会派に入った元民主党の国会議員たちにとって、参院選は自民への貢献をアピールする好機でもある。衆院議員の一人は地元新潟で実績を積もうと集会を重ねる。一方、かつて民主のホープと言われた衆院議員は、地元の反発で足踏みを続けている。
■後援会・労組票固め 新潟
民主党政権で政務官を務め、今春自民党入りしたばかりの鷲尾英一郎衆院議員(新潟2区)は5日夜、東京電力柏崎刈羽原発にほど近い、新潟県柏崎市西山地区の小ぶりの公民館で演説をぶっていた。
「二大政党の実現は難しかった。『何でも反対』の野党に議席を奪われたら新潟は沈んでしまう」
部屋いっぱいに集まった約50人を前に額に汗をにじませ、新潟選挙区(改選数1)に立候補した自民現職の塚田一郎氏の支援を訴えた。入党からわずか10日ほど後に起きた塚田氏の「忖度(そんたく)」発言を「自民党」としてわび、支援を訴える。
鷲尾氏を支える力の源は、2万人近くを擁する個人後援会「イーグル会」だ。地区ごとの同会幹部を頼りに、公示後はほぼ毎日集会を開催。公示前は塚田氏やその妻と一緒に企業・団体を回り、自らに近い野党系の地方議員を固める。
民主党の支持母体だった連合新潟とも良好な関係を維持する。自民入り後も鷲尾氏と関係を保つ労働組合は少なくない。労組側にとっては「野党系にこだわるより『鷲尾』を介して政策実現した方がいい」(関係者)との判断もある。自民支援を組織内で徹底する民間労組もあるという。
鷲尾氏がつかむ後援会や労組は、自民にとって魅力ある存在。これまで野党系に流れていた個人票や労組票を取り込むことが期待でき、自民の支持層の拡大につながるためだ。
ただ、新潟2区は、自民最大派閥の細田派に所属する細田健一衆院議員(比例北陸信越)が次期衆院選の公認内定を意味する党支部長を務めている。県連幹部は「(参院選では)どこで票が伸びたか、参院選後に党本部が評価する。ライバル意識で相乗効果が出る」と話す。(杉山歩、岡本智)
■応援弁士に招かれず 静岡
衆参国会議員が各地に飛んだ公示日4日の東京・永田町は閑散としていた。2日前に自民党会派入りしたばかりの細野豪志衆院議員(静岡5区)は、地元小学生の国会見学に付き添っていた。
東京から約200キロ離れた静岡市葵区では、静岡選挙区(改選数2)に立候補した自民現職・牧野京夫氏の出陣式が行われていたが、声はかからなかった。入党をめざす細野氏に対する地元の自民関係者の拒否反応は根強く、ある自民県議は「来られるわけがない」と突き放す。
公示前日3日付のウェブサイトで細野氏は「明日から参議院選挙が始まるため、しばらくは街頭演説は中断となります」と報告。恒例の駅頭立ちを取りやめた。選挙期間中、独自に選挙運動のための街頭演説をして特定候補への投票を呼びかければ、公職選挙法に抵触する恐れがあるからだ。牧野氏陣営が応援弁士として細野氏を招待する予定はない。
「非自民」を旗印に政権交代を実現し、民主党政権で環境相を務めたホープ。野党再編を経て無所属に。今年1月に「政治理念を共有できる」として、自民の二階俊博幹事長が率いる二階派に、入党を視野に入会した。
2000年衆院選に初めて立候補して以降、選挙区で7回連続負けなしの圧倒的な強さを誇ってきた細野氏。静岡5区には岸田派の吉川赳衆院議員(比例東海)がいて競合するが、細野氏は次期衆院選で選挙区を移るつもりはない。
民主時代の歯切れの良い自民批判の記憶に加え、そんな強気な姿勢が地元静岡の自民関係者の反発を呼ぶ。
4月の静岡県議選では「陣営からの要請」で自民候補の応援演説に立ったが、参院選では今のところ滋賀県の自民候補を応援する予定となっている。(矢吹孝文、明楽麻子)
■新潟(改選数1)
打越さく良 51 無新〈立〉〈国民〉〈共〉〈社〉
塚田一郎 55 自現(2)〈公〉
小島糾史 43 諸新
■静岡(2)
牧野京夫 60 自現(2)〈公〉
徳川家広 54 立新
榛葉賀津也 52 国民現(3)
鈴木千佳 48 共新
畑山浩一 49 諸新
(届け出順、年齢は投票日現在、カッコ内数字は当選回数、〈 〉内政党は推薦・支持)
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