「オンラインに救われた」フリースクールに新ニーズ 出席扱い7倍に

有料記事いま子どもたちは

狩野浩平
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 「平均入浴時間ってどのくらいだと思う?」「7年後の未来はどうなっているかな?」

 画面の向こうから若いスタッフが問いかける。オンライン会議システムのチャット欄には、間髪入れずに反応が書き込まれていった。「30分くらいかな」「少子高齢化が進むと思う」「AIの仕事が増えている」

 ひととおり回答が出そろうと、スタッフが入浴時間に関するアンケート結果や対話型AIに聞いた回答例を示し、「どう思った?」とさらに問いかける。参加した26人の子どもたちは続々と感想や疑問を書き込み、所定の30分はあっという間に過ぎていった。

「オンラインでも通えるよ、ってなったらいいな」

 2日午後にあったフリースクール「SOZOWスクール」のホームルームは、完全オンライン。カメラをオンにして自分の姿を映している子はいなかったが、マイクをオンにしてしゃべったり、チャットに盛んに書き込んだり、子どもたちはとても多弁だ。終了後は好みの姿のアバター(分身)になり、往年のロールプレイングゲームを思わせるメタバース仮想空間)へ。共通の趣味を持つ友達とおしゃべりしたり、イラストや動画を作ったり、スタッフの講演を聴いたり、思い思いの活動に取り組んだ。

 都内の公立小学校6年のはる君(11)は、鉄道とカプセル玩具が大好き。街を歩いて電車に乗り、新しいガチャポンを探すのが趣味で、「色がかわいいカプセルを捨てたくなくて……。家に100個くらいあって大変です」と苦笑い。

 学校に行かなくなったのは4年生の冬休みが明けた頃から。以前から、同級生から暴力を受けたり、仲間はずれにされたりするいじめを受けていた。教員に相談したが真剣に受け止めてもらえず、次第に勉強でもプレッシャーを感じるようになり、家の外に出られなくなった。

 5年生に進級する頃、家族に「オンラインのフリースクールがあるからやってみない?」と勧められ、SOZOWに参加した。スタッフが見守る中、オンラインでゲームをしたり、電車の話をしたり、エクササイズをしたり。「完全オンラインで、通わなくていいというところに救われた。他の参加者も自分と同じように学校の人間関係に苦しんだ経験があるからか、優しくしてくれて、すごく楽しかった」

 昨夏からは、以前は学校で教わっていた国語や算数などの学習にも取り組み始めた。オンライン教材を使い、メタバース内の自習室で1日数時間学ぶ。スタッフから助言をもらいつつ、時には友達と雑談することも。授業中にトイレに立つこともはばかっていた学校での日々を思うと、精神的な負担が比較にならないくらい軽いという。

 はる君に、学校がどんな場所だったら通いたいかと尋ねると、こんな答えが返ってきた。「オンラインでも通えるよ、ってなったらいいな」

     ◇

ICT使い、学校外の機関で「出席扱い」7倍近くに

 フリースクールは何らかの事情で学校に通えなくなった子どものための民間の居場所だ。フリースクールでの活動が学習状況など要件を満たせば、在籍校の校長の判断で「出席扱い」とすることもできる。

 2019年に文部科学省が公表した全国1964の教育委員会などが対象の「民間の団体・施設との連携等に関する実態調査」によると、教委などが連携している民間の団体・施設の数は351に上り、うち約7割がフリースクールだった。351団体・施設のうち、通所型が96.2%で、インターネットによる学習のみをしていると回答したのは2カ所だけだった。

 しかし20年からのコロナ禍で一気にオンラインの学びが広がった。文科省の「児童生徒の問題行動・不登校調査」によると、自宅でICT(情報通信技術)などを使った学習に取り組み、学校外の機関で相談・指導を受けた日数も出席扱いとされた小・中学生の数は、22年度は2143人。コロナ禍前の19年度(307人)と比べると、7倍近くまで増えている。

 SOZOWスクール小中等部…

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    武田緑
    (学校DE&Iコンサルタント)
    2024年4月26日9時48分 投稿
    【視点】

    コロナの影響もあり、SOZOWスクールのようなオンラインの居場所や学び場はどんどん増えつつあります。同時ビデオ通話サービスとは違い、Gather等のアバターで参加できるので画面の中で授業に参加したり、休憩室で雑談したり・・・と、もっと自由度

    …続きを読む