がんになっても前向きに 患者が必要とする言葉を 山口のポポメリー

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松下秀雄
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 3月、山口市の小郡ふれあいセンターの一室に、10人ほどのがん患者や経験者らが集まっていた。

 乳がんの患者が、不安を打ち明けた。

 「経過観察に入ると、いままでのように頻繁に病院に通わなくなります。転移とか再発を自分で見つけられるのか。どう調子が悪くなったら疑わなければならないのか。全然、イメージがわきません」

 すると、ほかの参加者らが「再発や転移を恐れる人、ほとんどですよね」と共感を示したり、「私はCTでセーフと言われた翌日に、自分で(再発した乳がんを)見つけました。触診も、先生はさっさとやるだけで、自分でやったほうが念入りにできます」と体験を語ったりした。

 がんになった人同士で支え合う「ピア(仲間)サポート」などに取り組む「ポポメリー」が月に1回、対面で催している座談会の一コマだ。

治療を終えた人のウィッグ、無料で次の患者に

 深刻な話題なのに、笑い声も漏れる。意外と明るい雰囲気だな、というのが取材した感想だ。

 参加者からは、こんな声も上がった。

 「がんになって、仕事もできない、あれもこれもできないと自己肯定感が下がっていました。でも、アドバイスできたら『よっしゃ!』って。『ちょっとは役に立っている』という満足を、私がもらっています」

 会場の一角には、抗がん剤治療をする人のためのウィッグが並べられていた。治療を終えた人が寄付したウィッグを洗って手入れし、お寺で健康祈願をしてもらって、必要とする人に無料で譲渡している。

 試着を手伝っていたのは、福祉美容師の波多野早苗さん(61)。波多野さんはあるウィッグを指して、こう説明した。

 「これは中学生が使っていたんです。その中学生が良くなって、お母さんに『ポポメリーに寄付して』といってくれたみたいで。ウィッグは人毛と人工毛のミックスが多いんですけど、これは人毛。お母さんが気遣っていいのを買ってあげたんでしょうね。これをつけて、学校に通われていたんだと思います」

 波多野さんも乳がんを経験した。そのうえ、息子が25歳の時、がんで亡くなっている。

 「家族の気持ちも、自身の気持ちもわかる。だから、こういう活動をさせていただいているんです」

「同じ経験者の言葉のほうが重要」に衝撃

 ポポメリーは、代表で看護師の藤本育栄さん(53)が、がんになったことをきっかけに立ち上げた団体だ。

 2010年、39歳の時に乳がんになった。その時、藤本さんは「がんのことを分かっていなかった」と感じたという。

 看護師として、知識はもっていた。けれど、いざ自分が罹患(りかん)すると、医学的な知識だけでは解決できない様々な悩みがわいてきたからだ。たとえば、こんなことだ。

 子どもがほしい。治療のため…

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