「平和統一」放棄 日本に秋波 いま北朝鮮が本当に考えていることは

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聞き手・箱田哲也
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 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記は韓国を「不変の主敵」だとして、従来の平和統一路線を放棄する姿勢を鮮明にした。一方で日本には首脳会談の可能性をもちらつかせる。これらの動きをどうみるべきか。「北朝鮮は何を考えているのか」の著書がある南山大学教授の平岩俊司さんに、北朝鮮が今考えていそうなことを聞いてみた。

 ――北朝鮮が統一政策を大転換したとの指摘があります。

 「私はそうは見ていません。そもそも、北朝鮮はこれまで本気で平和統一を目指していたのか。1980年に北朝鮮は、一国二制度の統一を目指す『高麗民主連邦制』を提案しました。それ以降は、自らが主導する統一が困難になったことを前提に、統一の看板だけを掲げて先延ばししてきたのが実態です」

 ――早々に平和統一なんて無理だと考えていたわけですか。

 「変遷してきたのです。48年に南北二つの政権ができて以来、北朝鮮は『民主基地論』を基本に武力統一を目指します。民主基地論とは、分断を前提に北朝鮮地域だけで社会主義改革を進め、いずれ米国と傀儡(かいらい)政権に抑圧された南の人民を解放する、という考え方です。これが民族解放戦争としての朝鮮戦争です。武力統一が失敗すると、主として韓国内の革命勢力の育成や大統領府襲撃事件のようなテロを軸とする『南朝鮮革命路線』をとりました」

 「70年前後で南北の国力が逆転し、北朝鮮主導での統一が難しくなっていきます。南北は72年、自主的に平和的な方法で統一を目指すとする『南北共同声明(7・4共同声明)』を発表しますが、まだ双方とも平和共存を受け入れられる状況ではなく進展しなかった。その後、北朝鮮が提案したのが高麗民主連邦制です。ここで重要なのは『南朝鮮革命』を取り下げたことです。つまり、連邦制を統一の最終形態として自らの体制を維持しようとしたのです」

 「統一を先延ばしする姿勢は…

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    箱田哲也
    (朝日新聞記者=朝鮮半島担当)
    2024年4月18日9時33分 投稿
    【視点】

     北朝鮮をめぐる言説は、一方的に過剰な期待感や絶望感、先入観、偏見などに彩られることが多く、等身大、あるいは実像はこの範囲内にあるのだろう、という合理的な分析をさせにくくさせている嫌いがある。  そんな状況を少し落ち着かせることはできないか

    …続きを読む