たくさんの種まいた「ふたばいんふぉ」 復興伝え続けた日々に幕

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関田航 滝口信之
【動画】「ふたばいんふぉ」の最後の1日=関田航撮影
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 原発事故から復興しようとする福島県双葉郡8町村の歩みを伝えてきた民間の情報発信施設が、3月30日で幕を閉じた。原発事故の伝承施設としては草分け的存在で、地元の人と移住者をつなぐ交流の場でもあったが、事故から13年経ち、その役目に区切りをつけた。涙、拍手、感謝……。最後の一日に密着すると、地域住民やかかわる人たちのあふれる思いが交錯した。

 施設は福島県富岡町の「ふたばいんふぉ」。同町出身でホテル経営者の平山勉さん(57)が2018年11月、「地元目線で双葉郡の現状を発信していきたい」と、国道6号沿いの自ら所有する建物の一角に開いた。事故があった東京電力福島第一原発が立地する大熊町と双葉町では当時まだ、全町で避難指示が続いていた。事故から7年余り経ってなお、原発事故の伝承施設はほかになかった。

 約160平方メートルの館内に、8町村の復興状況を自らまとめたパネルや自ら購入した書籍、特産品を並べた。年4千~5千人ほどが訪れた。

 その後、大熊町や双葉町の一部で避難指示が解除され、伝承施設はほかにもできた。閉館の理由を「今は誰でも自由に8町村に入ることができ、情報発信もできる。一区切りつけたいなと思った」と話す。

 最終日のこの日。入り口のドアには感謝の思いが記された。

 「ありがとう ふたばいんふぉ 富岡のふたばは 大きく花咲いて 双葉郡に たくさんの種をまいてくれました」

 《3月30日午前11時》

 開館すると、多くの人が訪れ始めた。子ども2人と一緒に来た福島県いわき市の塩田陸さん(35)は、県立ふたば未来学園の教員だ。新入生が入学すると、最初に連れてきたのがふたばいんふぉだった。「1カ所で双葉郡8町村を知ることができて、学ぶのに役立つ施設。民間でここまで続けてきたのはありがたかった。今度からは生徒をどこに連れて行こう……」と話した。

 谷口太郎さん(30)は東京…

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