災害が閾値を超えるとき 防災学者が危ぶむ「限界」と三つの脆弱性

有料記事8がけ社会

聞き手・阿部彰芳
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A-stories 8がけ社会と大災害(4)

 社会を支える現役世代がさらに減り、支えを必要とする高齢者は増えていく。そんな構造変化は、日本の防災力にも大きく影響する。能登半島地震でみえた課題を踏まえ、縮小する日本社会で大規模災害にどう備えればよいのか。都市防災を専門とする東京大学の廣井悠教授に聞いた。

 ――能登半島地震で被災が大きかった奥能登は、高齢化率が50%程度で、本州で最も高齢化率が高い地域の一つでした。ほかの地域でもこれから高齢者はさらに高齢化し、支え手となる現役世代も減っていきます。防災面でどのような影響が考えられますか。

 災害時に身を守ったり、生活を再建したりしていくのに必要な「自助、共助、公助」のなかで、一番重要なものが自助でしょう。しかしこれから、高齢化がますます加速し、自分で自分の命を守れない可能性のある人も増えてきます。自助だけではもたない、という地域もどんどん増えてくるかもしれません。

 一方で、共助はどうでしょうか。助ける側を期待される若い人は、少子化で減っていきます。高齢化と合わせると、「助ける・助けられる」の比率は激変すると言ってよいでしょう。地域社会の密な関係もだんだん薄くなってきています。

 そして、公助についても、財政難の自治体が多くなっていく状況では、事前の防災投資、インフラ整備が十分にできない地域がでてくる可能性があります。

連載「8がけ社会」

高齢化がさらに進む2040年。社会を支える働き手はますます必要になるのに、現役世代は今の8割になる「8がけ社会」がやってきます。そんな未来を先取りする能登半島での地震は、どんな課題や教訓を示しているのでしょうか。4月14日から配信する8本の記事では、8がけ社会と大災害に焦点をあて、災害への備えや復興のあり方を考えます。

 ――自助、共助、公助のいずれも弱っていくことは避けられない、と。

 地震や津波にともなって降りかかってくる「問題」をピンポン球に見立てて、それを「自助」「共助」「公助」という三つのお皿で受け止めることをイメージして下さい。自助、共助、公助が弱まるということは、被害を受け止めるお皿が小さくなるということです。

 つまり、受け止めきれない問題がたくさん発生してしまうことになる。

 戦後以降、日本では都市の安…

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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2024年4月17日14時0分 投稿
    【視点】

    「リスクを過小評価しないことが大事です」。インタビューを結ぶ廣井教授のこの言葉、至極当たり前のようでいて、すごく考えさせられます。リスクの過小評価、それは問題の先送りと言い換えてもいいのかもしれません。その繰り返しが、積み重ねが、いまという

    …続きを読む