ファストフード店の時給20ドル、米カリフォルニアの「勝者と敗者」

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Kurtis Lee/The New York Times 翻訳=荒ちひろ/朝日新聞GLOBE編集部
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‘Winners and Losers’ as $20 Fast-Food Wage Nears in California

 10年前、ジェイミー・バイナムさんは米カリフォルニア州南部のショッピングセンターで、タイ料理店と栄養食品店の間に挟まれたバーベキューレストランの開店に貯金すべてをつぎ込んだ。

 「ディッキーズ・バーベキュー・ピット」のフランチャイズオーナーであるバイナムさんは、店の細部にまでプライドをもってこだわっている。入り口付近に積み重ねたヒッコリーの薪のディスプレーの大きさや、各テーブルに置かれたペーパータオルの位置、少人数のスタッフで1日10時間営業するために必要な入念な調整……。

 だが近年、スタッフを雇うことがどんどん難しくなっている。カリフォルニア州の最低賃金は2017年以降、上昇を続けており、しばしば年に1ドルのペースで上がっている。いまの最低賃金は時給16ドル(約2400円)だ。

 さらにこの4月、(法律の施行によって)カリフォルニア州のほとんどのファストフード店の時給が20ドル(約3000円)に跳ね上がり、全米の最高水準に躍り出ることになる(多くの従業員の最低賃金を20.29ドルとしているワシントン州シアトル郊外の小さな都市トゥクウィラだけが、これよりも高い水準となっている)。

 この野心的な法律は、支持する人々からは全国的に導入されることが望まれているが、対立する立場からは厳しい言葉で表現されている。支持者たちは、これはコロナ禍で大きなリスクに直面した低賃金労働者に対する公正な補償への一歩だとみている。一方、反対派たちは、食品価格の引き上げや雇用切りにつながり、一部のフランチャイズ店が閉店を検討せざるを得なくなるような激変だとみなしている。

 「賃金が上がれば物価も上がるということを、人々は理解していない」とバイナムさんは言う。

最低賃金が時給20ドルと、大幅に上がったカリフォルニア州のファストフード業界。この新たな試みは、広く社会に恩恵をもたらすのか、それとも……? 店のオーナーはもちろん、賃金が上がる従業員も思いは複雑のようです。

 この数年、利益率を維持する…

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