あの津波の映像、13年後の出会い 遺族とカメラマンとアナウンサー

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編集委員・石橋英昭
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 東日本大震災は、多くのものを奪ってしまったけれど、13年後のこんな出会いもある。

 宮城県名取市閖上を襲った津波で、中学生だった息子を亡くした丹野祐子さん(55)を、この2月、訪ねてきた人がいた。

 元NHKカメラマンの鉾井喬(ほこいたかし)さん(39)。鉾井さんは震災当時、入局1年目だった。地震の直後に仙台空港を離陸した報道ヘリのカメラから、津波が閖上の街をのみこむ様子を撮影し、衝撃的な映像が世界中にライブで流れた。

 この空撮映像で日本新聞協会賞を受賞。2年後にNHKを辞め、福島県を拠点に現代芸術家に転じた。

「安全な場所から撮っていた」罪の意識

 鉾井さんにとって、あの映像を撮ったことがずっと心の重荷だった。初めて会う丹野さんに、胸のうちを明かした。

 「3月11日、NHKのヘリはたまたま格納庫の外にいて、離陸できた。そうでなければ、地震の知識もなかった僕は地上を取材していて、津波にのまれたかもしれない。ヘリのおかげで助かった僕は、安全な場所から津波の映像を撮っていた……」

 津波による閖上の死者・行方不明者は約750人。カメラがとらえた現実の重さに、罪の意識を持っていたのだという。

 言葉を継いだ。

 「まさにその場にいた丹野さ…

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