電力システム改革が始まってから10年経つが、電力自由化や再生可能エネルギーの拡大は依然として道半ばだ。圧倒的な市場支配力を持つ大手電力の不祥事もなくならない。電力・ガス取引監視等委員会の初代委員長だった八田達夫氏は「電気事業法に罰則が必要」と指摘する。
――大手電力の送配電部門が、社外の事業者の取引情報を自社の小売り部門に漏らす不祥事が相次いで発覚しました。
電力自由化とは、規制された送電料金の下で送電線を公平に開放し、発電事業者や小売事業者の参入を自由にして競争させることだ。
社外の発電事業者が電力を売った時間帯が分かれば、市場価格と比べてみて、発電コストの水準が分かる。この情報を電力会社の発電部門に漏らせば、新規発電事業者の参入を著しく阻害する。従って他部門への情報遮断は、電気事業法で送配電事業の許可条件の柱とされている。
日本では、大手電力のホールディングカンパニーの下に、送配電部門を別会社として置き、発電部門や小売り部門とは切り離す法的分離という制度にした。社内の発電、小売り部門と、社外の事業者との公平な競争を確保するためだ。
送配電部門には、中立性を守るという条件の下、事業認可を与えた。電気事業法は、もし、これに違反すれば、経済産業相は許可を取り消すことができるとしている。
取り消された場合は、ホールディングカンパニーは、送配電事業を、他社に売却しなければならない。欧州のほとんどの国で行われている所有権分離が、自動的に実現する。
事業認可取り消し条件明文化を
――ですが、情報漏洩(ろうえい)や不正閲覧が問題になった後も所有権分離は実現しそうにありません。
電気事業法は、社内の小売り…