体の細胞から卵子を作れる時代は近い? 命の始まりめぐる研究はいま

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野口憲太
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 自分の体の細胞から卵子や精子を自在に作り出せる。そんな世界さえ現実になるかもしれない――。京都大のグループが、iPS細胞から卵子、精子の前段階となる細胞の大量培養に成功。卵子、精子をつくれる段階になるまでに課題はあるが、命の始まりをめぐる研究がかつてない展開を見せている。一方、規制の議論は遅れている。(野口憲太)

不妊の原因解明や治療法にも役立つ研究

 17日の記者説明会で、京都大の斎藤通紀教授は「(ヒトの卵子、精子をつくる)研究のハードルがほぼ無くなったのではないか」と話した。

 研究に用いたのは、ヒトの体の細胞を採ってきてつくったiPS細胞。これを卵子や精子のもとになる「始原生殖細胞」に変え、さらに、一歩先の段階の「卵原細胞」と「前精原細胞」に変化させ、試験管内で大量に得ることに今回成功した。

 斎藤さんはこの分野をリードしてきた。

 2011年、斎藤さんらがマウスのiPS細胞から精子をつくることに成功。その精子から子どものマウスも生まれた。翌12年には卵子もつくり出した。

 研究はヒトでも進み、斎藤さんらは18年、ヒトの卵原細胞の作製に成功していた。ただこのときは、ヒトの細胞とマウス胎児の卵巣の細胞を一緒に培養する、特殊で複雑な手法が必要で、得られた卵原細胞の数も少なかった。米国のグループも20年、同様の手法で、ヒトの前精原細胞ができたと報告した。

 今回は、マウスの卵巣などの…

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