「警戒の空白」防ぐ警察体制2700人以上増員 「匿流」や警護強化
警察庁は28日、昨年7月に示した警察の組織や業務の見直し指針を受けた体制強化などの実施状況をまとめた。要人警護やサイバー分野など重点的な対策で、合わせて2700人以上を増員したとしている。
2022年7月に起きた安倍晋三元首相銃撃事件で、後ろ側の警護体制が抜け落ちた「後方警戒の空白」が指摘された。これを教訓に警察庁は全ての分野で業務を見直す「警戒の空白を生じさせないための組織運営の指針」を策定。都道府県警などで改革を進めている。
警察庁によると、安倍氏の事件を受けて対策を始めた22年9月から24年度初めにかけ、特に体制を強化すべきだとした7項目について、都道府県警で総勢2763人を増員。内訳は、▽サイバー事案で高度な技術による捜査支援体制で500人以上▽SNSなどで緩やかに結びつく「匿名・流動型犯罪グループ」の実態解明などの捜査体制で700人以上▽特殊詐欺の連合捜査班などで500人以上▽要人警護の体制拡充で300人以上――などという。
安倍氏の事件や昨年4月に岸田文雄首相が爆発物で襲撃された事件を受け課題となっているローンオフェンダー(組織に属さない単独の攻撃者)の対策では、昨年8月から一部の警察で新たな体制を試行した。警備部門に司令塔を置き、各部門の情報を集約して危険度を評価し、組織の総合力を挙げて対応する仕組みという。試行をふまえ、各都道府県警がこうした体制作りを進める。
警察庁の露木康浩長官は28日の定例会見で、「警察力全体の最適化を図るよう引き続き取り組みを進めていく」と述べた。(編集委員・吉田伸八)
警察業務の体制強化の実施状況
▽サイバー対処能力
サイバー特別捜査隊を部に拡充、高度な技術による捜査支援体制を強化、500人以上増員
▽匿名・流動型犯罪グループの取り締まり
犯罪収益解明班の拡充や専従体制を構築、700人以上増員
▽特殊詐欺の捜査連携
都道府県警の連合捜査班の構築など、500人以上増員
▽経済安全保障の確保
外国語能力をもつ人材の育成などを推進、400人以上増員
▽要人警護
実践的訓練や資機材の整備、専従の室などを設置、300人以上増員
▽自転車や小型モビリティー対策
指導取り締まり体制を強化、100人以上増員
▽ローンオフェンダー(組織に属さない単独の攻撃者)対策
都道府県警で司令塔を置く仕組みを構築
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