52体のお地蔵様、どうしてここに 「生き証人」の歴史に思いはせて

東野真和
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 岩手県大槌町の市街地に、3月上旬、52体のお地蔵様が次々とやってきた。多くの町民は、懐かしがって頭をなでたり、飾り物をプレゼントしたり。一方で、町外の人や子供たちは、お地蔵様の由来を知らず、ただ驚くばかり……。

 お地蔵様たちは、東日本大震災後、被災者のためにと、長野県の僧侶が寄付を集めて贈ったものだった。町内の各仮設住宅団地や役場前に魂を入れて置かれ、被災者は犠牲になった家族や友人らを思って祈ったり、復興を願ったりした。

 仮設住宅が撤収され住民が日常を取り戻すと、役目を終えたお地蔵様は、僧侶に寄贈を頼んだ町のNPO法人「まちづくり・ぐるっとおおつち」の事務所があった町外れの空き地に移され、ほとんど住民に見られることはなくなった。

 2021年に三陸御社地天満宮が再建され、翌22年にできた社務所の2階に、事務所は引っ越した。お地蔵様は、来年夏に町内に完成予定の追悼施設「鎮魂の森」に移されることが決まったが、それまでの間にも多くの人に見てもらおうと、天満宮の社の横に少しずつ運んだ。

 ぐるっとおおつちの小向幹雄代表(89)も仮設住宅で「復興地蔵」と銘打って祈った経験を持つ。お地蔵様はそれぞれ、当時住民たちが編んだ帽子や服、手作りの飾り物などを、色あせてはいるが今も身につけている。「同じ顔をしているはずなのに、表情が違って見える。住民の思いが移ったのかな」

 まさに「復興の生き証人」。だが、観光客や震災学習に来た人を相手にしているガイドたちは、その由来を知らないのか、あまり語らない。そのため、小向さんらが説明している。

 「震災を伝える物がこの町にはない。社務所でお団子でも食べがてら、お話を聞きに来てください」東野真和

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