公示地価 全用途平均が27年ぶりにプラス 南北や東西の二極化拡大

小泉浩樹
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 国土交通省は26日、全国の土地の公示地価(1月1日現在)を公表した。岩手県内の全ての用途の1平方メートルあたりの平均は4万3700円(上昇率0・4%)と1997年以来27年ぶりにプラスに転じた。住宅地は3万4700円(上昇率0・8%)で2年連続の上昇。工業地も2万2600円(同1・9%)で7年連続の上昇だった。一方、商業地は6万6800円(下落率0・5%)となり、31年連続の下落となった。

 公示地価は土地取引の目安とされ、年1回公表される。県内では25市町村の計186地点が調査された。

 住宅地は、JR東北線や東北道、国道4号が通るなど利便性の高い県央や県南の都市部での需要の高まりが全体を押し上げた。

 近年人気を集めてきた盛岡市の本宮や向中野といった市南部の新興住宅地域では、建築費の高騰に加え、供給が一段落したため、一戸建ての価格が5千万円台に突入している。そのため、矢巾町紫波町といった近隣地域にも一戸建ての需要が波及している。

 上昇率が最大だった盛岡市永井(上昇率8・5%)は、本宮、向中野の近隣で、JR岩手飯岡駅から近いことから人気を集めた。

 また、今後の動向で注目されるのは、盛岡市中心部のバスセンター周辺で進むマンション建設ラッシュ。現在、6棟約380戸の建設が進み、かなりの需要を吸収するとみられている。

 商業地は、下落が続いたものの、下落率は昨年の0・9%から縮小した。ただ、人流は回復傾向にあるが、物価高や人手不足が足かせになり、飲食店の新規出店はまだ低調。そうした中、マンション需要の高まりから、商業地をマンション用地として取引する動きが価格を下支えしている。

 工業地は、サプライチェーンの国内回帰や「2024年問題」による物流中継地点を求める需要が旺盛なことから引き続き堅調に推移している。

 一方で、いずれの用途においても県北や沿岸地域など、利便性に欠け、少子高齢化が進む地域では弱含みが続いている。住宅地で見ると、127地点のうち、上昇したのは県央、県南の59地点にとどまった。

 調査の県代表幹事で不動産鑑定士の吉田勇光さんは「近年のキーワードは利便性重視だ」とした上で、「県央、県南の上昇幅が大きくなって総じてプラスに転じたが、二極化は続くだろう」と話した。小泉浩樹

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