熊本国府、阿南光に惜敗 堅守に声援 選手ら「夏に必ず帰ってくる」

興津洋樹
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 第96回選抜高校野球大会の2回戦で、熊本国府は25日、阿南光(徳島)と対戦し、0―3で惜しくも敗れたが、持ち前の堅守や粘りにアルプス席から終始大きな声援が送られた。1回戦で甲子園初白星をつかんだ選手たちは「夏に必ず帰ってくる」と誓った。

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 七回裏、熊本国府の守り。もう1点も与えられない。先頭打者に内野安打で出塁を許すと、マウンド上の植田凰暉(ごうき)投手(3年)のもとに内野手が集まった。そして、「森先生が見ているぞ。力を借りよう」と野田希主将(3年)が言い、みんなで天を仰いだ。

 その直後、一塁走者を牽制(けんせい)でアウトにすると、二ゴロ、三振とテンポ良く後続を断った。植田投手は「森先生の力で乗り切ることができた」と振り返った。

 森先生とは、2006年の創部時から部長などとしてチームを支え、昨年8月に病気で急逝した森宏さん(享年84)のこと。昨年3月に相談役を退いた後も、練習に顔を出し、「調子はどうや」と選手たちに声をかけ、雰囲気を和ませてくれた。そんな気遣いの一方で、「甲子園に行きたい。早く連れていってくれよ」と熱く語ることもあった。

 恩師との突然の別れを知らされたチームは悲しみに包まれた。だが、数日後には「森先生を甲子園に連れていこう」という声が選手たちから自然と上がり、合言葉に。昨秋の九州大会では「力を貸してください」と何度も天を仰ぎ、優勝して甲子園をたぐり寄せた。選抜1回戦でもピンチで何度も「力」を借り、甲子園で初勝利をつかんだ。

 2回戦は惜しくも逆転はならなかったが、選手たちは森さんとともに戦った。

 先発の坂井理人投手(3年)は、マウンド上で1人で何度も空を見て、心の中で「力を貸してください」とつぶやいた。「本当はもっと森先生を勝たせてあげたかった。全員でレベルアップして夏に帰ってきて、春の国府とは違う姿を天国から見てもらいたい」

 帽子のつばの裏に「森先生のために」と書いている野田主将は、「森先生にこれからも、もっと成長した姿を見せたい」と誓った。興津洋樹

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