「拉致は解決済み」強気崩さぬ金与正氏の狙いは 政府内には警戒感

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鬼原民幸 ソウル=太田成美 後藤遼太
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 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記の妹で朝鮮労働党副部長の金与正(キムヨジョン)氏は25日、岸田文雄首相が「早期に国務委員長(金総書記)と直接会いたいという意向を我々に伝えてきた」とする談話を発表した。日本人拉致問題については「解決済み」とする従来の立場を崩さず、日本側に譲歩を迫った。朝鮮中央通信が伝えた。

 首相はこれまでも北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記との「トップ会談」が重要と訴え、自身直轄の「ハイレベル協議」を通じて日朝首脳会談の実現を目指すと公言し続けてきた。複数の日朝関係筋によると、昨年3月と5月、日本政府関係者が北朝鮮の朝鮮労働党関係者と東南アジアの主要都市で秘密接触。会談の場では、日本政府が政府高官を平壌に派遣する案も話し合われたという。

 北朝鮮の金与正(キムヨジョン)朝鮮労働党副部長は談話で、首相が最近「別ルート」で早期訪朝の意思を伝えてきたと主張したが、林芳正官房長官は25日の会見で「様々なルートを通じ(北朝鮮側への)働きかけを絶えず行っている」と日朝間の水面下のやりとりを認めた。複数の日朝関係筋によると、日本政府は内閣官房や外務省の関係者ら複数ルートで接触を試みているという。

 岸田政権下の日朝関係は、1月の能登半島地震をめぐって正恩氏が首相宛ての見舞いの電報を出すなど、変化が見られる。今回の与正氏の談話も、首相の早期訪朝に向けた意気込みが平壌に着実に届いたことを裏付けるものといえる。

談話、日本に揺さぶりか 政権幹部は警戒感

 ただし、日本政府内では、与…

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    箱田哲也
    (朝日新聞記者=朝鮮半島担当)
    2024年3月26日10時20分 投稿
    【視点】

     日朝関係で大きな節目と考えたためか、他紙に比べ大きな扱いで現状を読み解いた。  「首相の早期訪朝に向けた意気込みが平壌に着実に届いたことを裏付けるものといえる」といったあたりは、日本政府内の一部に確実にある、日朝首脳対話への胸の高鳴りを率

    …続きを読む