「匿流」暗躍、暴力団へ上納 詐欺、強盗… 警察庁「広く違法行為」

編集委員・吉田伸八
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 警察庁は組織犯罪の昨年の情勢をまとめた。SNSなどを通じて緩やかに結びつく「匿名・流動型犯罪グループ」が、特殊詐欺をはじめ強盗や窃盗など様々な違法行為に関わり、犯罪収益を上納するなど暴力団ともつながっていると指摘。「匿流(とくりゅう)」と略称する集団が治安上の脅威になっており、実態解明と取り締まりを強めるとしている。

 警察庁の露木康浩長官は21日の定例会見で、「組織や構成員がはっきりしている暴力団を中心に据えてきた組織犯罪対策のあり方を大きく転換させなければならない」と述べた。

 警察庁は従来、暴力団ほど明確な組織構造はないものの、暴力団と密接に関係する集団を「準暴力団」と定義してきた。しかし、「ルフィ」などと名乗る幹部らが指示したとされる一連の事件では、SNSなどを通じた「闇バイト」で実行役を集め、事件ごとにメンバーが異なるといった特徴がある。集団の境界が不明確で、離合集散を繰り返すこうした形の集団を警察庁は昨夏、「匿流」と位置づけた。

 警察庁は、匿流が特殊詐欺のほか、ヤミ金や違法風俗、カジノ、スカウト、ぼったくり、リフォーム詐欺などに関わっていると指摘。特殊詐欺の被害金や違法なネットカジノの収益の一部が暴力団幹部らに流れていたケースも確認され、匿流が暴力団に上納したり共謀したりしている実態があるという。

暴力団勢力は19年連続で減少

 警察庁は、匿流やそのメンバーの数は「捉えきれない」と説明する。ただ、SNSを通じて実行役を集めた強盗、窃盗事件で21年9月~今年2月に195人を摘発。また昨年までの3年間の摘発(いずれも暴力団組員らを除く)が、特殊詐欺で6170人▽密売など営利目的の薬物事件で2292人▽身分証偽造など犯罪インフラの事件で1721人おり、これらが匿流の勢力を示す目安になるとしている。

 一方、暴力団勢力は昨年末時点で2万400人で前年を2千人下回り、19年連続で減少した。内訳は、暴力団組織に所属する構成員(組員)が1万400人、組織に属さないが活動に関わる準構成員や周辺者が1万人で、いずれも前年より1千人減少した。

 逮捕・書類送検した暴力団勢力は前年比3・0%減の9610人。犯罪の種類別では、全体の19・9%を占める覚醒剤取締法違反に次ぎ、詐欺が13・9%と多い。詐欺が占める割合は年々増加傾向にあり、特殊詐欺のほか、各種の給付金詐欺や銀行口座の詐取など様々な手口があるという。(編集委員・吉田伸八

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