ストーカー加害者全員に警察が連絡へ、近況を確認 治療の有効性伝達

編集委員・吉田伸八
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 警察庁は18日、禁止命令を受けたストーカーの加害者全員を対象に、警察が連絡して近況などを確認する制度を全国で新たに始めると発表した。殺人など重大な事件に発展するケースが後を絶たず、取り組みを強める。

 加害者に連絡する制度は、ストーカー規制法に基づき被害者への接触などを禁じる禁止命令を受けた加害者について、原則として全員が対象で、被害者が拒否する場合などは除く。警察が電話や訪問などで加害者に連絡し、被害者への執着の程度や生活の様子などを確認し、その度に再発や報復の恐れなどのリスクを評価する。必要に応じて被害者に伝える。

 加害者全員を対象に、禁止命令を出す際に、医療機関での治療やカウンセリングが有効な場合があることをリーフレットを使うなどして知らせる。2016年度から各地の警察で、個別の加害者ごとに判断して治療を具体的に働きかける取り組みを進めてきたが、今回、その前階としてまず全員に有用性を知らせることにした。

 被害者に対しては、防犯指導を強化するほか、緊急通報装置を貸し出す際に常時携帯することの重要性を説明し、使い方の練習を行う。警察庁は全国にこうした対策の実施を指示。各都道府県警が順次導入していく。

 警察庁は昨年8月~今年1月、北海道や愛知、大阪、福岡など10都道府県警でこれらの対策を試行。396件の禁止命令があり、177件で加害者への連絡を実施した。ただ、そのうち2件は連絡後に加害者が禁止命令違反容疑で逮捕された。治療の有用性は363件で伝え、うち治療などを受けたのは29件という。

禁止命令、過去最多の1744件

 連絡制度などの対象となる禁止命令は年々増加しており、22年は全国で過去最多の1744件だった。

 ストーカー事件が殺人などに至る例は相次ぐ。昨年1月には福岡市で、女性会社員が元交際相手の男に刃物で襲われ亡くなった。福岡県警は男に対し女性に接触しないよう禁止命令を出し、女性に一時避難などを勧めていたが、事件を防げなかった。(編集委員・吉田伸八

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