「森先生、力を貸してください」 熊本国府、元部長の遺志胸に初勝利

興津洋樹
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 (18日、第96回選抜高校野球大会1回戦、熊本国府2―1近江)

 森先生、力を貸してください――。18日の第3試合で初戦に臨んだ熊本国府(熊本)の選手たちは、試合の大事な場面で天を仰ぎ、心の中でそうつぶやく。誰よりも甲子園出場を願い、昨夏に急逝した元部長の思いを力に、春夏通じて初の大舞台に挑み、この日、初勝利をつかんだ。

 昨年8月、選手たちは練習場のベンチ前に集められ、涙ぐむ山田祐揮監督(31)から、森宏さん(享年84)が亡くなったと伝えられた。

 2006年の創部時から部長などとして支え、昨年3月に相談役を退任した森さん。その後も練習に顔を出し、「調子はどうや」「この前のプレーは良かったなあ」と選手たちに声をかけ、雰囲気を和ませてくれていた。そんな気遣いの一方で、「とにかく甲子園に行きたい。早く連れていってくれよ」と熱く語ることもあった。

 恩師との突然の別れに、チームは悲しみに包まれた。だが、数日後には「森先生を甲子園に連れていこう」という声が選手たちから自然と上がり、合言葉になった。

 4番の中嶋真人選手(3年)は「ショックだったけど、ずっと下を向く訳にはいかない。森先生のためにも頑張ろうと思った」と振り返る。以来、ここぞという場面で「力を貸してください」と念じているという。

 昨秋の九州大会準決勝の神村学園(鹿児島)戦では、得点機の打席で心でつぶやき、初球をたたくと、逆転の2点適時二塁打に。森さんの支えを感じたという。

 エースの坂井理人投手(3年)も、昨秋の試合でピンチを迎えると、マウンド上で天を見上げるようにした。すると、森さんから力をもらえるような気がして、心が落ちついたという。

 「森先生と一緒に甲子園に来ることができた。きっと天国から見てくれているので、力をもらいながら戦いたい」。そう話す選手たちは、夢の舞台を思い切り楽しむつもりだ。興津洋樹

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