けが克服の矢吹正道、ついに復帰戦 兄弟同時世界王者へ勝負の1週間

伊藤雅哉
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 プロボクシングの元世界王者、矢吹正道(31)=名古屋・LUSH緑ジム=が、大けがからの復帰戦に臨む。

 16日、名古屋市内で1年2カ月ぶりのリングに上がる。50・3キロ契約10回戦で、相手は元世界ランカーのケビン・ビバス(28)=ニカラグア=だ。

 「勝って世界トップ戦線に返り咲きたい。もうこの次は、世界戦をやりたいんで」

 昨年5月の実戦練習中に左足アキレス腱(けん)を断裂した。世界王座奪回が現実味を帯びてきた中でのアクシデント。ジムから救急車で運ばれた際は「引退がよぎった」という。

 兄弟同時での世界王者をめざす、弟で同門の力石政法(29)から「手術しかないだろう。もう一回やれよ」と背中を押され、再起を決意。手術後すぐ、松葉杖をついてジムに帰ってきた。

 同じジムに通って練習する中1の長女・夢月(ゆづき)さん、小4の長男・克羽(かつば)さんの練習を見守るのが中心だったが、合間に筋力強化に励んだ。大きく体重が増えることもなく、戦う体を維持してきた。

 実戦練習を再開する前の昨秋から、ジムは復帰戦の対戦相手との交渉に入った。

 矢吹の希望は「復帰即世界戦」だった。

 まだ足の感覚は戻っていなかったが、試合間隔が開きすぎれば世界ランキングは落ちたり、消えたりする。万全の状態に戻るのを待っていれば、チャンスは通り過ぎていく。世界戦が決まるつもりで練習を続けた。

 結果的に、今回は交渉がまとまらず、ボクシングが盛んな中米ニカラグアの有望株ビバスが相手に決まった。パワフルに前進するファイターだ。

 矢吹は本来、足を使って距離を取りながら、相手のパンチに合わせて打つカウンターを得意とする。

 今回の試合に向けては、足の状態を確認しながら実戦練習を積んできた。「動きに制限がかかった中で、接近戦に磨きをかけてきました。今までは、やろうとしても、どうしても得意な遠い距離になってしまっていたんで」。試合では「新しいスタイルになると思う」と語った。

 弟の力石もイタリア・ローマでの世界挑戦者決定戦が控える。その試合が22日(日本時間23日)にあるため、矢吹は自分の試合が終わればすぐに日本を発つ。

 「まずは自分の試合ですけど。急に忙しくなりますね」。2人にとって、勝負の1週間が始まる。伊藤雅哉

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