「人口戦略法案」 ミスター介護保険の名物官僚が小説に託した本気

有料記事多事奏論

編集委員・原真人
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記者コラム「多事奏論」 編集委員・原真人

 日本の人口減を心配したフランスの人口学者エマニュエル・トッド氏が以前、朝日新聞の取材にこんな話をしていた。

 「日本人と人口動態の議論を重ねて20年、最初は日本に問題はあっても、少なくとも話し合ってはいると思っていた。だがそのうちに気づいた。日本では人口動態は語るためのテーマであって行動するためのテーマではないのだ」

 かつて政府には「人口問題審議会」という組織があったが、2000年に廃止された。当時ある委員は強く批判した。「21世紀の日本が必然的に超高齢・人口減少社会に突入し、補充移民が大きな政策課題になるのは容易に予想される。この時代にこそ審議会は必要。行革はそのような機会を永遠に奪った」と。

 昨年、日本の出生数は過去最少の76万人、婚姻数は戦後初めて50万組を割った。本格的な人口縮小時代となってしまった今に至るまで、政府や国会が本気の少子化対策に取り組んだ試しはない。

 2年ほど前、少子化対策を真正面から取り上げた経済小説永田町霞が関でひとしきり話題になった。「人口戦略法案」(日本経済新聞出版)。550ページの大部の物語には現実の人口統計や政策資料がちりばめられ、移民問題を含む人口減対策の論点がほぼ網羅されている。

 物語の主役は政府の人口戦略…

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