第22回甲子園至上主義からの脱却を 元球児が提言する持続可能な高校野球
高校野球、アップデートしていますか? 脱暴力編
暴力的指導のない高校野球に向けて、何ができるのか。かつて甲子園の舞台に立ち、スポーツのコーチ向けの研修活動に携わる桐蔭横浜大学の渋倉崇行教授(52)=スポーツ心理学=に聞いた。
――教壇に立つ一方、一般社団法人スポーツフォーキッズジャパンを2014年に設立しました。
「2012年12月に大阪市立高のバスケットボール部員が顧問からの暴力などを理由に自死した出来事がきっかけです。それまでは、学校の運動部員のストレスや、スポーツ活動を通じたライフスキルの育成を主な研究テーマにし、スポーツの発展に寄与したいと思っていましたが、実際に寄与できていなかった無力感を抱きました。研究で得られる知識はたくさんあるのに、現場に効果的に下りていないのでは。また、現場で必要とされることを私たちは研究していたのか。そうした問題意識を持ち、研究と現場の橋渡しの役割ができる組織が必要だと、設立しました」
――どういった研修をするのでしょうか。
「各自治体の教育委員会やスポーツ協会などの団体から依頼を受け、主にコーチの人間力向上をテーマにしています。暴力やハラスメントの根絶、その方法としてのアンガーマネジメントの研修を組むことも多いです」
――1989年夏、新潟南高の投手として全国高校野球選手権に出場しました。どんな高校時代でしたか。
「野球をしていて楽しいと思ったことはほとんどありませんでした。そして、当時はそれが当たり前で、野球というものは蹴られ、殴られ、理不尽なことに耐えながら勝利を目指すものだ、という価値観が私にもありました。自分でやっている感覚よりも、やらされているという感覚の方が強かったです」
――日本大学に進んだ後は。
「高校で野球はやめたいと思…
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- 【視点】
「スポーツは楽しいもの」だなんて、知らなかった、気づかなかった。そんな渋倉崇行教授の体験談に驚きました。と同時に、いまもそんな風に感じながら、ただただ勝つためだけに、つらい気持ちを押し殺しながらスポーツと向き合っている人、多いのだろうなと。
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