キッシンジャー外交の光と影 ベトナム和平と米ソデタントから考える

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田島知樹
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 ヘンリーキッシンジャー元米国務長官が昨年、100歳で亡くなった。厳しい批判もあるが、彼の外交が世界に変化をもたらしたことは否定できない。国際秩序がますます動揺している今、その業績からキッシンジャー外交の意義と限界を考えた。

 ベトナム戦争をめぐる外交はキッシンジャーの大きな業績の一つだろう。1973年に南北ベトナムとの和平協定をまとめ、米軍を撤退させた。これによりノーベル平和賞を受賞した。

 「ベトナム戦争は米国外交史上最大の悲劇でした」。独協大教授の水本義彦さん(米外交史)はそう話す。ジョンソン政権が65年に共産主義の北ベトナムに爆撃を始めて以来、戦争は泥沼化していた。キッシンジャーがニクソン政権の大統領補佐官になったのが69年。その時点で米兵54万人が動員され、3万人以上が亡くなっていた。

 そんな状況下でまずキッシンジャーはソ連と対立していた中国に接近、ソ連との関係も改善させた。大国間で国際秩序の安定を進め、中ソ両国が支援していた北ベトナムとの交渉も有利にしようとした。「イデオロギーに支配されず友敵関係を再定義した」と水本さん。現実主義外交と言われるゆえんだ。

 だが北ベトナムとの交渉はうまくいかなかったと水本さんは考える。

後半では、米ソデタントについて考えます。キッシンジャー外交について識者は「冷戦を終わらせるといった大きなビジョンがあったわけではない」と話します。

 理由の一つに米国内の情勢が…

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