埼玉高速鉄道の延伸、事業化要請を見送り さいたま市

岩堀滋 黒田壮吉
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 埼玉高速鉄道(SR)の延伸計画について、さいたま市は24日、同社に事業化を要請する手続きを「当面見送る」と発表した。清水勇人市長は今年度中に要請する考えを示していたが、概算建設費が想定よりふくらみ、計画内容の見直しも必要になったという。

 延伸計画は、SR浦和美園駅(同市緑区)から、東武野田線岩槻駅(同市岩槻区)の約7・2キロの区間をつなぐというもので、市が県とともに推進してきた。

 線路などは独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が整備し、SRが運行を担う想定だ。

 市によると、概算建設費は、2017年時点では860億円と見積もっていたが、材料費高騰や工法の再検討などで現在は1300億円にふくらんだ。

 また、工事現場の人手不足などから、必要な工期は7年間から18年間へと伸びる見込みだという。

 このため、市は建設費の縮減や工期短縮が必要と判断。SRと同機構に助言を求めながら計画を練り直し、時期は未定だが、事業化要請を目指すという。

 建設費に国の補助が適用される目安は、整備費用に対する効果の比率(費用便益比)が「1」を超え、累積黒字転換点(採算性)が30年以内となることだ。市は国の補助が得られた場合、国、県と市、同機構で3分の1ずつ建設費を分担したい考えだ。

 市はこうした内容を、24日の市議会特別委員会でも報告。「熟度を上げて事業を前に進める」と説明したが、市議からは「事業に取り組む強い覚悟を見せる必要がある」などと苦言も出た。

 清水市長はこの日、報道陣の取材要請に応じなかった。4期目を目指した21年の市長選では「延伸申請手続きの早期実現」を公約に掲げ、当選後の同年6月の市議会で、23年度中に鉄道事業者に要請する考えを示した。

 延伸計画について、大野元裕知事は全面的に市を応援する姿勢を示している。県の担当者は「今後も早期の延伸実現に向け協力していきたい」と話した。

 SRの荻野洋社長は「要請がないのは残念だが、(市の動きは)延伸の早期実現に必要なプロセスと前向きにとらえている」とのコメントを出した。岩堀滋、黒田壮吉)

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