初売り、にぎわう書店 ひろしま案内人 本と商店街:佐藤明久さん

古書店主
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 今年も正月2日から「児島書店」は開店しました。年末12月31日まで無休で営業を続けます。この習慣は、敗戦後に上海から引き揚げてきた両親が、福山駅そばで古書店を始めてから続いています。

 午前9時前、バス通りを自転車で店に向かうと、天満屋福山店の玄関口の人だかりが目に入りました。初売りまでまだ1時間ありますが、さすが百貨店です。

 私の書店にも、午前10時の開店早々、中年の男性客が来て「東京に帰る新幹線で読む文庫を見つけたよ」と、推理小説を購入されました。

 建築士のお仕事で、よく旅をされるとのこと。正月休みに築城400年で話題になった福山城を訪れ、鞆の浦の町並みを巡ったそうです。

 「新年早々ですが、子供向けの本を買い取ってもらえますか」。続いて別の男性客の来店です。地元出身の井伏鱒二が訳した岩波書店のドリトル先生シリーズが、きれいな状態で12冊そろっていました。

 午後3時ごろ、店先の商店街から若い男女のおしゃべり声が聞こえてきました。コロナ禍が落ち着いて、帰省してきた若者たちです。

 店にも、大阪から帰ってきた学生さんの女性客がやってきました。本棚に掲げた写真を見つけて、「この人知ってる。キャンディーズのスーちゃん(田中好子)だ」。

 よくぞ気付いてくれました。これは映画黒い雨」の撮影後、今村昌平監督や俳優の北村和夫、田中好子が、荻窪の井伏宅を訪問したときの写真です。井伏と交遊のあった福山市の元教員で、詩人でもある故清水凡平(ぼんぺい)さんが撮影したものです。

 解説を聞いた女子学生は「それじゃあ」と、小説「黒い雨」をお買い上げいただきました。(古書店主)

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