避難所で乾杯「不謹慎と言わないで」 夜な夜な出店する居酒屋の正体

有料記事能登半島地震

塩谷耕吾 若井琢水
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 プシュッ、プシュッ。

 缶を開ける軽快な音に続いて、「カンパーイ」の発声。そして笑い声が漏れてくる。

 「語ろう亭」

 そう名付けられたこの場所があるのは、能登半島地震の避難所となっている石川県七尾市の田鶴浜体育館。2階の会議室に、午後8時を過ぎると人が集う。18日にオープンした、毎晩1時間限定の「居酒屋」だ。

 メニューは日替わりで、19日にはブリ大根、おでん、モツ煮の鍋が並んだ。業務用冷蔵庫にビールやソフトドリンクが準備され、料理もお酒も一つにつき200円の代金を缶に入れる。

 この日は十数人が集まった。子連れの夫婦から70代の男性まで幅広い年齢層で、ビールを片手に、自宅周辺の被災状況などを口々に話した。

 「これを不謹慎と言わないでほしい」

 バスケットボールB3「金沢武士団」社長で、「居酒屋」を発案した中野秀光さんは言う。

 新潟県出身。2004年の中越地震、07年の中越沖地震で被災し、11年の東日本大震災では復興支援活動を経験した。

 「避難は長期戦になり、精神が参ってくる。大事なのは会話を交わすこと。孤独は、災害関連死などにつながっていくから」

きっかけはゴミ袋のビール缶

 武士団は、田鶴浜体育館を練…

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    辻田真佐憲
    (評論家・近現代史研究者)
    2024年1月21日19時48分 投稿
    【視点】

    たいへん素晴らしい取り組みです。コロナ禍のとき、特定の職業を「エッセンシャル」と呼び、あたかもそれ以外がエッセンシャルではないかのような考えが一時広まりました。しかし娯楽や趣味、なにげない気晴らしだって、ひとびとが日常を送っていくうえで欠か

    …続きを読む
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    江川紹子
    (ジャーナリスト・神奈川大学特任教授)
    2024年1月21日20時10分 投稿
    【視点】

    とてもよい取り組みだと思う。  被災者は発災以来、ものすごい我慢を強いられている。我慢のし通しでは、参ってしまうでしょう。  つかの間の息抜きとなり、リラックスして人と会話できるこういう場があることは、救いになるのでは。  1時間限定

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