金融市場でにわかに高まっていた日本銀行のマイナス金利政策の「早期解除説」は、19日に開かれた日銀政策決定会合での現状維持決定と、その後の植田和男総裁による慎重姿勢の記者会見で一気に吹き飛ばされた。
この日はっきりしたことは、植田日銀が異次元緩和の出口戦略をまったく急いでいないということだ。むしろ意図的にゆっくりと、鈍いくらいの動きで進もうとしているように見える。日銀はなぜ「牛歩戦術」を選ぶのか。
マイナス金利政策の早期解除説に傾いていた市場参加者たちの思惑がまるで外れてしまったことは、この日の外国為替市場の動きからも明らかだ。
日本時間の今月14日、米中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)が来年前半にも利下げ局面に変わりそうだという情勢が明らかになると、為替相場は1ドル=140~142円台まで円高ドル安が進んだ。
その裏には日銀の早期利上げ説もあった。日米金利差が縮小すると見て、ドルを売って円を買う動きが強まったのだ。
ところがその見立てを突き崩すように19日昼には、日銀が大規模緩和の現状維持を発表した。午後に開かれた記者会見では植田総裁が早期解除説に距離を置き、来年1月会合での決定についても慎重姿勢を示した。日米金利差が思ったほど縮まらないと踏んだ為替市場ではこの日、一気に2円以上も円安ドル高が進んだ。
「チャレンジング」から見えるもの
このところ市場ではたびたび異次元緩和の終了を意味する「マイナス金利解除説」と「イールドカーブ・コントロール(YCC=長短金利操作)撤廃説」が取りざたされていた。
9月に読売新聞が報じた植田…
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