楽天・銀次が引退、バットを置いて選んだ次打席 「ここで恩返しを」

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 プロ野球楽天の銀次選手=本名・赤見内(あかみない)銀次=(35)は22日、楽天モバイルパーク宮城で記者会見を開き、現役引退を発表した。今後は球団のアンバサダーに就任し、野球振興や地域貢献の活動を通して東北とつながり続けるという。

 「今年でユニホームを脱ぎます。プレーヤーとして現役引退します」

 30人ほどの報道陣を前に、銀次選手はそう宣言した。カメラのフラッシュを浴び、緊張した面持ちで続けた。

 「東北、仙台に残り、楽天イーグルスでアンバサダーをやらせていただきます」

 銀次選手は岩手県普代村出身。盛岡中央高校から2005年の高校生ドラフト3巡目で楽天に入団。楽天一筋で18年プレーした。

 当初は捕手だったが、内野手に転向して、足がかりをつかんだ。「毎日悔しいと思いながら練習して、悔しさをパワーにした」

 パ・リーグが誇る好打者に成長し、13年には球団初のリーグ優勝と日本一に主力として貢献。19年には生え抜き選手として初の1千安打も達成した。

 「みんなが想像できないくらいにすごく楽しかった」という現役生活。まだ体の不調を感じることはないといい、「体力も技術も落とさないように、逆にレベルアップしようという心構え」だった。楽天以外での現役続行も模索した。

 それでも楽天での引退を決めたのは、東日本大震災の被災地で出会ったファンの声が胸に響いたからだという。シーズン終了後、毎年恒例にしている家族での被災地訪問の中で「東北を離れてほしくない」「ずっと楽天にいて欲しい」――。そう声をかけられた。

 銀次選手も「東北が好きだし、生まれた場所なので、ここで恩返しをしていきたい」。引退を決断した。

 現役生活のなかで一番印象に残っていることを尋ねられると、9月22日の日本ハム戦を挙げた。今季初めて1軍に昇格し、代打で出場した打席だ。本拠地で大声援が巻き起こり、「今だから言えますけど、ちょっとウルッときて、『これじゃ駄目だ』と思いながら打席に入った記憶があります。本当に幸せを感じましたね」と振り返った。

 また、故・星野仙一元監督の下で達成した13年の日本一も「一生忘れない」と語った。この日は、星野氏が生前着用したネクタイを締めて会見に臨んでいた。

 通算1240試合に出場し、打率2割9分、1239安打、28本塁打、471打点。右投げ左打ちのヒットマンは、今後は球団職員に転身。アンバサダーという立場で新たな「打席」に向かう。「今まで以上に被災地の方に寄り添い、一人でも多くの人を笑顔にしたいです。正直言って、体のどこかにまだ火はついています。でも将来に向けて選んだ道なので、ただただ突き進んでいくだけです」福留庸友

元担当記者が見た、銀次の「蘇生」

 銀次がバットを置いた…

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    稲崎航一
    (朝日新聞大阪スポーツ部長)
    2023年11月22日18時47分 投稿
    【視点】

    楽天球団初年度の2005年秋のドラフト会議で指名された銀次選手は、まさに球団史の生き字引です。 田中将大投手の1年先輩にあたります。 IT企業という特性か、楽天は球団職員も創設時のメンバーはほとんどおらず、どんどん転職していっています。

    …続きを読む