文化交流 外交が安定してこそ 日韓の「眺め」を変えた徴用工問題

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聞き手・箱田哲也
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 日本と韓国の間の最大の外交懸案だった徴用工問題は、その対立の「震源」となった韓国大法院(最高裁)の判決から5年が過ぎた。この間、両国の市民同士の交わりにはどんな影響があったのか。長く日韓交流を見つめてきた朝鮮半島地域研究者の小針進さんに聞いた。

 ――徴用工問題は日韓の一般市民同士の付き合いに変化をもたらしましたか。

 政治外交関係をめぐる日本人と韓国人の「眺め合い」に、計り知れない影響があったと見ています。互いに相手の国から「してやられた」という感覚が広がりました。

 ――眺め、ですか。

 はい。日本人の韓国への眺めには、かねて「蒸し返し」や「約束違反」がありましたが、大法院判決が決定打でした。慰安婦問題に関する2015年の日韓合意を当時の文在寅(ムンジェイン)政権が空文化したことや、韓国海軍の自衛隊機へのレーダー照射事件も相まって、ネット上の書き込みや居酒屋でのサラリーマンの会話には、「してやられた感」に満ちた「嫌韓」を吐露する声が多くなりました。

 19年7月に安倍政権が発表した、韓国向け輸出管理の強化措置は、内閣支持層だけでなく不支持層からも当時の世論調査日本経済新聞)で6割以上の人が「支持」しました。今年初めまで「日本が譲歩するぐらいなら関係改善を急ぐ必要はない」という空気感が、日本社会の主流だったと言ってよいでしょう。

日本に「してやられた」 感情が韓国で拡散

 ――では、韓国側ではどうだったのでしょうか。

 実は歴史をめぐる問題は日常…

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